2023年の全米1位曲 | ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

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過去と現在の洋楽シーンをチャートデータをもとに紹介するページ(週一更新予定)

■ Flowers / Miley Cyrus (1/28~3/4,3/25~4/1) 8 Weeks

 

 

アメリカはTennessee州Franklin出身のシンガーソングライターMiley Cyrusの2013年「Wrecking Ball」以来となる2回目の全米1位曲です。1月28日付けから不連続ながら4月1日まで8週間1位を獲得しました。これはMiley Cyrusにとって最大のヒットとなります。1位獲得週はStreamingsが52.6Mで1位、Digital Salesが70,000回で1位、Radio Airplayが2.4Mでした。
かつてはDisney Channelのドラマ『Hannah Montana』で主役として活躍し、その後はシンガーとしても活躍。「We Can't Stop」では清純派から一変しますが、2013年に初のシングル1位を獲得。それから10年が経ち、まさかのカムバックとなります。NBCの「Miley's New Year's Eve Party NBC Special」で発表されたということもあって話題を呼び、Spotifyなどのストリーミングを大幅に稼ぎました。70年代後半の大ヒットGloria Gaynorの「I Will Survive」のような憂いがかったメロディのディスコナンバーで、自分自身の自立を誇示するために花に例えた力強い意思の歌です。

■ Die For You / The Weeknd & Ariana Grande (3/11) 1 W

 

 

カナダはトロント出身のThe Weekndの「Die For You」がAriana GrandeとのRemixを発売したことでThe Weekndにとって7曲目、Ariana Grandeにとっても7曲目の全米1位を獲得しています。3月11日付けで1週間。Streamingsは32.4Mで1位、Digital Salesは14,000回で3位、Radio Airplayは81.1Mで3位でした。
この曲はもともとThe Weekndの2ndアルバム『Starboy』に収録されていた曲で、2016年には43位でチャートインをしていました。その後The Weekndのベストアルバム『The Highlihgts』に収録され、そして2022年末にTikTokでViralヒットとなり、チャートを駆け上がり、Remixの発売で1位までたどり着きました。最初のチャートインから1位まで6年2ヶ月3週間はこの時点ではMariah Careyの「All I Want For Christmas Is You」に次ぐ2位の記録でした。The Weekndらしい陰のあるシンセサイザーポップになっています。

Last Night / Morgan Wallen(3/18、4/15~4/22、5/6~7/8、7/22、8/12~8/19) 16 Weeks

 

 

アメリカはTennessee州Sneeville出身のカントリーシンガーMorgan Wallenの初の全米1位で、3月18日から不連続ながら8月19日まで実に16週間全米1位を続けました。これは2023年最大のヒットで、2023年のカントリーブームを巻き起こす要因となりました。1位獲得週はStreamngsは47.5Mで1位、Digital Salesは18,000回、Radio Airplayは10.8Mでした。カントリー出身シンガーはTaylor Swiftがいますが、カントリー曲としては2000年のLonestar以来の快挙でした
Morgan Wallenは2016年にデビューアルバムを発売しますが、注目を集めたのは2021年に発売された『Dangerous The Double Album』からでした。それが2023年までロングヒットとなっている中でアルバム『One Thing At A Time』がリリースされて、そこから「Last Night」が全米1位を獲得します。曲は時折ラップのように歌ったり、バックに低音のベースが鳴ったりとトラップの影響も感じさせるカントリーナンバーで、Post Maloneがロック寄りになっているのと同じようにカントリーがラップ寄りになったことが大ヒットにつながりました。

Like Crazy / Jimin (4/8) 1 Week

 

 

韓国のボーイズグループBTSのメンバーJiminの初の全米1位曲で、4月8日に1週間輝いています。1位獲得週はStreamingsが10M、Radio Airplayが64,000回でしたが、セールスが254,000回で1位となり、これが1位に押し上げました。BTSのメンバーとしては初で、韓国のアーチストソロとしても初の全米1位となりました。
The Weekndっぽいシンセポップの曲ながら、イントロの入り方からメロウなグルーブ感があります。BTS、Jiminの人気もさることながら、世界でヒットしているR&B、Soulに馴染んだ曲の感じはこれまでとは違った新しいステージに入ったことを感じさせます。

Kill Bill / Sza (4/29) 1 Week

 

 

ミシシッピ州St Louis出身のR&BシンガーSzaの初の全米1位曲です。アルバム『SOS』からカットされて、元々高い評価がありましたが、1位付近を漂っていたあたりでDoja Catとのリミックスが発売されて、4月29日に1週間1位に輝きました。1位獲得週はRadio Airplayが86,5Mと3位から2位へと上昇。Doja CatのRemix効果もあってStreamingsが28.3Mで4位から3位に、Digital Salesは前の週から228%の伸びで5,000回(36位から8位)でした。
デビューアルバム『Ctrl』が高い評価を受けて、2ndアルバム『SOS』発売前からカットされた曲もTop10ヒットとなっていました。恋人を殺してしまったという歌詞と切ないメロディとSzaの声がマッチした曲で、PVはタイトルの「Kill Bill」のようなアクション映画のような内容になっています

Vampire / Olivia Rodrigo (7/15、9/23) 2 Weeks

 

 

カリフォルニア州Murrieta出身のシンガーソングライターOlivia Rodrigoの「Drivers Licence」「Good 4 U」に続く3曲目の全米1位獲得曲。2ndアルバム『Guts』からのカットで、リリースされるとStreamingsは35.5Mで1位、Digital Salesは26,000回で2位、Radio Airplayは26.3Mで22位を記録して、7月15日付けで1位を記録しました。その後アルバム『Guts』が発売されると、9月23日に1位に復帰しています。
曲は「Drivers Licence」のようなゆったりとしたバラード調から始まり、2番目からはアップテンポになり、終盤はEDMかトランスかという状態で終わる凝った構成になっています。MeatloafやCeline Dion、Bonnie Taylorのヒット曲を手掛けたJim Steinmanのような感じで、前回に手応えを感じたロックの路線をさらに一歩進めたリードトラックになっていました。

■ Seven / Jung Kook f.Latto (7/29) 1 Week

 

 

韓国のボーイズグループBTSのJung Kookの初の全米1位曲です。BTSのメンバーとしてはJiminに続く2曲目の1位獲得となりました。7月29日に1週1位ですが、その週はStreamingsは21.9Mで4位、Digital Salesは153,000回で2位、Radio Airplayは6.4Mでした。Jung KookにとってはCharlie Puthとの「Left And Right」(2022年22位)に続く2曲目のTop40ヒットでしたが、この後「3D」「Standing Next To You」が立て続けにTop10ヒットとなりソロ活動としては華々しいものになりました。
曲はUsherやCraig Davidあたりを彷彿とさせるグルーブ感あるソウルナンバーで、R&Bヒットの王道という感じの曲になっています。Jiminもそうですが、これまでのR&B Soulのヒット曲に馴染んだスタイルになってきているのは、今後もヒットが続くことを予感させます。

Try That In A Small Town / Jasdon Aldean (8/5) 1 Weeks

 

 

ジョージア州Macon出身のカントリーシンガーJason Aldeanの初の全米1位曲です。7月29日にはJung Kookの「Seven」に負けて2位登場だったものの、翌8月5日に1週1位を獲得。その週はStreamingsは30.7Mで3位、Digital Salesは175,000回で1位、Radio Airplayは8.8Mを記録しています。その前の週はDigital Salesが228,000でCountry曲のデジタルセールスとしてはFlorida Georgia Lineの「Cruise」が記録した244,000回以来の高い数字を記録していました。
Jason Aldeanは2005年にデビューしますが、ブレイクしたのは2010年のアルバム『My Kinda Party』からになります、その後4枚の全米1位アルバムをリリースして人気カントリーシンガーとなります。2011年には「Dirt Road Anthem」がカントリーとしては異例のシングル7位を記録しています。やや人気に陰りがで始めた2020年に、Morgan Wallenのブレイクによりカントリー曲そのものが人気となっていきます。そんな中でこの曲は「通りで突然殴られたり」「赤信号で老人女性の車を奪い取り」「酒屋の主人に銃を突きつけ」「警察を罵倒し」「国旗を踏みにじる」という小さい町で自分の身は自分で守るという極めて政治的な歌詞で話題になります。またPVは1927年に18歳の黒人男性Henry Choateが白人女性を襲った濡れ衣でリンチを受けて殺害されたテネシー州モーリー郡の庁舎前で撮影されたものでした。この週は2位がMorgan Wallen、3位がLuke Combsと上位3位をカントリーが独占するということで、カントリーの強い2023年を象徴する週となっています。

■ Rich Men North Of Richmond / Oliver Anthony Music(8/26~9/2) 2 Weeks

 

 

バージニア州Farmville出身のカントリーシンガーOliver AnthonyことOliver Anthony Musicの初の全米1位曲です。レーベルと契約していないで、まったくのセルフリリースによる1位獲得。YoutubeでアップされたPVも自身の携帯電話で撮影されたもので、Anthonyも昨年アップされた12曲は携帯電話で録音されたものであることを話しています。8月26日と9月2日の2週1位で、1位獲得週はStreamingsは17.5Mで4位、Digital Salesは147,000回で1位、Radio Airplayは553,000 Radio Airplay Audience Impressionsを記録しています。
曲は労働者の問題を歌ったもので、労働者階級の痛みや不満、金持ちに対する怒りというかつてのフォークロックやパンクロックにあったようなロックの根源的なパワーの怒りが込められた曲です。

■ I Remember Everything / Zach Bryan f. Kacey Musgraves (9/9) 1 Week

 

 

沖縄生まれオクラホマ育ちのカントリーシンガーZach Bryanとテキサス州Golden出身のカントリーシンガーKacey Musgravesの初の全米1位獲得曲で、Zach Bryanのアルバムが発売された9月9日に1週間1位を獲得しています。これで2023年はMorgan Wallen、Jason Aldean、Oliver Anthony Musicに続き4曲目のカントリーからの全米1位獲得となりました。この週はStreamingsは33.7Mで1位、Digital Salesは10,000回で4位、Radio Airplayは263,000回でした
曲はロック寄りとはいえMorgan Wallenのようなトラップの要素もないシンプルなギターサウンドですが、アルバム『Zach Bryan』を聞くとBruce Springsteenのアルバムのような印象さえ受けます。「Something In The Orange」が初のTop40ヒットながら66週かけて今年1月に10位に達した勢いもありましたが、Zach Bryanのブレイクは新たなロックカントリースターの登場を感じさせます。この曲Hot100だけではなくて、Hot Country Song、Hot Rock & Altanative Songsでも1位獲得となっています。

■ Paint The Town Red / Doja Cat (9/16、10/7~10/14) 3 Weeks

 

 

ロサンゼルス出身のR&BシンガーとラッパーDoja Catの2020年の「Say So」以来となる2曲目の全米1位獲得曲です。9月16日から不連続ながら10月14日付けまで3週間1位を獲得。1位獲得週はStreamingsは27.7Mで2位、Digital Salesは8,000回で5位、Radio Airplayは32,1Mで15位でした。
Doja Catは前作のヒットですっかりポップスターとなっていましたが、今作前の「Attention」でスタイルの変更を宣言して、すっかりダークな雰囲気となっていました。そんな中でリリースされたこの曲はDionne Warwickのヒットで有名な「Walk On By」をサンプリングしていて、これは何があっても我が道を歩くというアンチヘイトな曲でした。しかしこれがTikTokでバイラルヒットとなり、Doja Catにとって最大のヒットになっています。サンプリング元になっているBurt Bacharachにとっては2004年にTwistaとKanye Westによる「Slow Jamz」で「A House Is Not A Home」がサンプリングされて以来の1位獲得でした。

■ Slime You Out / Drake f.Sza (9/30) 1 Week

 

 

カナダはトロント出身のシンガーソングライター出身のDrake と セントルイス出身のSzaの1位獲得曲で、9月30日に1週間記録しました。Drakeにとっては12曲目の全米1位、Szaにとっては「Kill Bill」に続く2曲目の全米1位獲得で、Streamingsは32.6Mで1位、Digital Salesは2,000回で29位、Radio Airplayは5.2Mを記録しました。この週のDrakeに関する記録をまとめると12曲目の全米1位、37曲目のTop5、70曲目のTop10、178曲目のTop40、299曲目のHot100ヒットで、1位以外は全て歴代1位の記録を更新しています。
Drakeは2008年にSzaと交際していたという話があっての曲で、Soul Superbsの「Just Ask Me」をサンプリングしているDrake初期のようなグルーブ感のある曲になっています

■ First Person Shooter / Drake f.J.Cole (10/21) 1 Week

 

 

カナダはトロント出身のDrakeと西ドイツフランクフルト出身のラッパーJ.Coleの全米1位曲で、DrakeにとってMichael Jacksonに並ぶ13曲目の全米1位曲となり、J.Coleにとっては初の全米1位曲となりました。1位獲得週はStreamingsが42.2Mで1位、Digital Salesが4,000回で7位、Radio Airplayは4.3Mでした。
「Slime You Out」と同じくアルバム『For All The Dogs』収録曲ですが、こちらの曲はアルバム発売と同時にリリースされていています。前半と後半の曲が違う2弾編成構成はTravis Scottの「Sicko Mode」のような感じの曲で、Joe Jacksonの「Look Me In The Eyes」のボーカルサンプルから始まり、曲の後半にはSnorre Tidemandの「Redemptioon」のループがサンプリングされています。

■ Cruel Summer / Taylor Swift(10/28~11/4、11/18~11/25)  4 Weeks

 

 

Taylor Swiftにとって10曲目の記念すべき全米1位曲。Taylor Swiftは2023年『Midnights』の大ヒットにより全盛期を迎えていましたが、それを象徴する全アルバムからの曲をするEras Tourでフューチャーされていたのが2019年に発売されたアルバム『Lover』からの「Cruel Summer」でした。この曲は2019年の9月7日に29位にランクインしていましたが、2023年になってTaylor Swiftの意向で正式にシングルカットされて、Eras TourとそのLiveを映画にして10月13日から公開された『The Eras Tour』の大ヒットが後押しになり、そのライブバージョンをシングルリリース(10月18日)することで全米1位に辿り着きました。10月28日から不連続ながら11月25日まで4週間1位を記録。1位獲得週はStreamingsは18.6Mで5位、Digital Salesは41,000回で1位、Radio Airplayは77.8Mで2位でした。Digital Salesは13曲目の1位獲得でした。
切ない夏の恋を歌った歌で、当時からアルバムのハイライトとされていた曲でしたが、新型コロナウィルスのパンデミックによりシングルリリースの計画は中止されていました。痛みと絶望を伴うロマンチックな関係はそのままポップスターとなったTaylor Swift自身の今を描いていて、また当時の恋人だった俳優のJoe Alwynとのことを歌っているとも言われています。

■ Is It Over Now? (Taylor's Version) / Taylor Swift(11/11) 1 Week

 

 

Taylor Swiftにとって11曲目の全米1位曲です。アルバム『Midnights』から続く2023年の大活躍のトリとも言えるのが『1989 (Taylor's Version)』のリリースで、これがTaylor Swift自身でも最大の1,653,000Unitsを売り上げて、そこからの収録曲はTop40を埋め尽くしました。その中の1曲がこの曲で、11月11日に1週間1位を記録。Streamingsは32Mで1位、Digital Salesは5,000回で7位、Radio Airplayは4.7Mでした。
アルバム『1989』に入らなかったものを再録音したものながら、メディアには高い評価を受けていて、エレクトロポップバラードながら物語性のある歌詞とメロディはこのアルバムのハイライトとも言われています。作曲プロデュースはTaylor SwiftとJack Antonoff。この週はアルバムから合計7曲がTop10に入っていて「Cruel Summer」も加えればTop10の内8曲を占めました。アルバムではTop40の中にTaylorのアルバムは9枚入り、Top10には3枚入るという歴史的な活躍ぶりを象徴する週となっています。

■ Lovin On Me / Jack Harlow (12/2) 1 Week

 

Louisville出身のラッパーJack Harlowの2021年のLil Nas X f.Jack Harlowの「Industry Baby」、2022年の「First Class」に続く3曲目の全米1位獲得曲です。2023年末現在で12月2日1週の1位で、1位獲得週はStreamingsは23.6Mで1位、Digital Salesは11,000回で2位、Radio Airplayは20.8Mで32位でした。
曲はDelbert Dale Greerの1995年の「Whatever」をサンプリングしたポップなナンバーで、ループするサビメロが頭に残るということもあってTikTokでバイラルヒットとなり今年の年末に世界中で大ヒットとなりました。「First Class」とは違ったコミカルなPVもまた話題となりました。

■ Rockin Around The Christmas Tree / Brenda Lee (12/9~12/16、1/6) 3 Weeks

 

Brenda Leeにとって3曲目の全米1位ですが、何よりこの曲が最初にヒットしたのは1960年のことで、これが65年のスパンで1位にたどり着いたことに驚きがありました。12月9日から1月6日まで3週1位でしたが、クリスマス曲は毎年ヒットしていてこの記録はこの先伸びていく可能性があります。
もともとこの曲はロック時代最初の頃に作られたクリスマスの定番曲で、1960年から2023年の間にクリスマスチャート入りしていた期間以外で13年ランクインしていますが、ここ最近はMariahの曲に次ぐ2位が続いていました。今年は65周年ということもあって、初のPVが作られたり、TVでの露出があったりと当初から盛り上がっていて、Spotifyなどでも好調でした。1位獲得週にはStreamingsは34.9Mで1位、Digital Salesは3,000回で12位、Radio Airplayは20.7Mで33位を記録しました。