2022年の全米1位曲 | ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

過去と現在の洋楽シーンをチャートデータをもとに紹介するページ(週一更新予定)

■ We Don't Talk About Bruno / Carolina Gaitan,Mauro Castillo,Adassa,Rhenzy Feliz,Diane Guerrero,Stephenie Beatriz & Encanto Cast (2/5~3/5) 5 Weeks


 

ディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家(Encanto)』の挿入歌で、ディズニーアニメ映画としては1993年の「A Whone New World」(『アラジン』)以来となる全米1位獲得となりました。アーチストのクレジットはCarolina Gaitan...とあり、これは全米1位曲で最も多いArtist Creditです。2月5日から3月5日までの5週間1位を記録しています。最初に1位を獲得した日のStreamingsは34.9Mで1位、Digital Salesは12,300回で3位、Radio Airplayは1.5Mでした。映画『ミラベルの魔法だらけの家』の大ヒットを受けて「We Don't Talk About Bruno」以外にも「Surface Pressure」、「The Family Madrigal」、「What Else Can I Do? 」「Dos Oruguitas」がTop40ヒットとなりました。

映画は家族愛と多様性のメッセージが盛り込まれたもので、音楽をバックに美しいCGとスピード感のある映像が印象に残りました。「We Don't Talke Bruno」は予知能力のあるブルーノおじさんの歌で、この映画のキーになっている曲になります。南米を舞台にした映画ということでラテンポップな曲となっています。

■ Heat Waves / Glass Animals (3/12~4/9) 5 Weeks

 

 

イングランドはOxfordで結成された4人組ロックバンドGlass Animalsの初の全米1位曲です。1位までにかかったチャートイン数は59週で、Mariah Careyの「All I Want For Christmas Is You」の35週目をはるかに超えたものです。50週以上チャートインですら既にロングヒットですから、そこからピークを迎えるというのはチャートの歴史の中でも希な曲と言えます。2020年8月に3rdアルバム『Dreamland』が発売されて2020年6月29日に「Heat Waves」がリリースされます。2021年に入ってからヒットし始め、2021年5月1日に全米チャートでTop40入りを果たします。2021年11月13日にはそこから39週かけてTop10入りを果たし、さらに20週かかっての1位獲得で、3月12日から4月9日まで5週間1位を記録しています。1位を獲得した週はRadio Airplayが66.7Mで2位、Streamingsは14.8Mで6位から5位、Digital Salesは2,900回で23位から25位でした。
ヒップホップの要素も持つダンサブルなロックで、世界中がコロナ禍の中、ロックダウン中のサウスロンドンの街をを歩くPVは歌詞も合わさって反響がありました。Tik Tokでは「All I Think About Is You」というフックが2021年の夏からトレンドとなる不思議と飽きがこない曲です。

■ As It Was / Harry Styles (4/16,4/30~5/7,6/4~6/25,7/9~7/23,9/3~9/24) 15 Weeks

 

 

One Directionのメンバーであり、イングランドはWorcestershire出身のシンガーソングライターHarry Stylesの2曲目となる全米1位曲で4月16日付けから9月24日付けまで不連続ながら15週1位を獲得しています。15週というのは全英出身のアーチストとしては最高記録となりました。しかも翌2023年も上位に入り続けて、2023年6月10日付けまで実に61週Top40をキープするロングヒットとなっています。1位獲得週のStreamingsは43.8Mで1位、Digital Salesは10,300回で16位から2位、Radio Airplayは27.2Mで19位でした。
Harry Stylesの「Adore You」「Watermelon Sugar」を作プロデュースしたKid HarpoonとTyler Johnsonとのコンビによるポップロックな曲で、ウクライナ出身のTanu Nuinoがシンプルながら人間の孤独を感じさせるPVを監督しています。

■ First Class / Jack Harlow (4/23,5/21~5/28) 3 Weeks

 

 

アメリカはケンタッキー州Louisville出身のラッパーJack HarlowのLil Nas Xでフューチャリグされた「Industry Baby」以来となる2曲目の全米1位ですがJack Harlow自身の曲では初の全米1位獲得となります。4月23日から不連続ながら3週1位を記録し、1位獲得週はStreamingsが54.6Mで1位、Digital Salesが10,600回で1位、Radio Airplayが4.1Mを記録しています。2007年にFergieが全米1位を獲得した「Glamorous」をサンプリングしたメロディアスなラップで、スターとなったJack Harlow自身が「First Class」だと歌ったもの。

■ Wait For U / Future f. Drake & Tems (5/14) 1 Week

 

 

アトランタ出身のラッパーFutureの2021年の「Way 2 Sexy」(Drake f.Future & Young Thug)以来2曲目の全米1位で、自身のクレジットとしては初の全米1位曲。5月14日付けの1週1位を記録していて、1位獲得週のStreamingsは40.2Mで1位、Digital Salesは6,400回で7位、Radio Airplayは7.9Mを記録しています。
アルバム『I Never Liked You」からのカットで、ナイジェリア出身のラッパーTemsの2020年の曲「Higher」をバックトラックにDrakeをフューチャリングしています。Futureらしいボイスチェンジャーをつかったもったりとしたボーカルが印象的。フューチャリングされたDrake にとっては10曲目の記念すべき全米1位で55曲目のTop10ヒット、146曲目のHot100ヒットとなりました。

■ Jimmy Cooks / Drake f.21 Savage (7/2) 1 Week

 

 

カナダはトロント出身Drakeのアルバム『Honestly Nevermind』からのシングル。DrakeにとってはFutureの「Wait For U」に続いて2022年2曲目の全米1位で通算では11曲目の全米1位獲得となり、歴代では7位タイの記録となりました。7月2日付けの1週だけ1位で、Streamingsは42.2Mで1位、Digital Salesは6,000回、Radio Aiplayは3Mを記録しています。Stremingsで1位になるのはこれで13曲目となりました。曲はメロウなバックトラックに乗せるDrakeらしいトラップで、当時人気が爆発しつつある21 Savageとのコラボが話題となりました。

■ About Damn Time / Lizzo (7/30~8/6) 2 Weeks

 

 

デトロイト出身のR&BシンガーLizzoの2019年の「Truth Hurts」以来となる2曲目の全米1位曲。7月30日から8月6日まで2週間1位を記録して、1位獲得週は、Streamingsは14.3Mで8位、I Tunesでのディスカウントセールスで14,000回を稼ぎDigital Salesは1位、Radio Airplayは88.2Mで3週目の1位を記録しています。
アルバム『Special』からのリードシングルで、自身の体型に前向きになれる歌詞を70年代後半のR&Bディスコサウンドでコーティングした曲で、前のアルバムからの「Juicy」の路線をさらにパワフルにした曲となっています。

■ Break My Soul / Beyonce (8/13~8/20) 2 Weeks

 

 

Houston出身のR&BシンガーBeyonceの8曲目となる全米1位曲で、アルバム『Renaissance』からのシングル。アルバムの中の1曲として一つ目のピークになる象徴的な曲で、イントロのガチャガチャする入りが効いています。8月13日から8月20日まで2週間の1位で、1位獲得週はStreamingsは18.9Mで3位、Digital Salesは13,000回で5位、Radio Airplayは61.7Mで4位を記録しています。
R&B、ソウルながら、挑戦を続けて、アルバムでは名盤を連続しているBeyonceがエレクトロ、ハウスを取り入れた曲で、ベースになっているのは1990年にヒットしたRobin Sの「Show Me Love」で、これに2014年のExploard」がサンプリングされています。ハウスやバウンスの高揚感をソウルミュージックにミックスしたことで歌詞の「Break My Soul」の解放のメッセージをより強くしています。

■ Super Freaky Girl / Nicki Minaj (8/27) 1 Week

 

 

トリニダードドバゴ出身のラッパーNicki Minajの「Say So」(Doja Cat f.Nicki Minaj)、「Trollz」(6ixnine f. Nicki Minaj)に続く3曲目の全米1位で、Nicki Minaj自身では初の全米1位曲。8月27日付けで1週間1位を記録して、1位獲得週はStreamings は21.1Mで1位、Digital Salesは89,000回で1位、Radio Airplayは4.6Mを記録しています。
MC Hammerでも有名になったRick Jamesの1981年のヒット「Super Freak」をサンプリングしたポップなナンバーで、性的な空想や努力をする女性を歌ったもので、過去に大ヒットした「Anaconda」のような曲とも言われます。女性ラッパーとして長く第一線にあり続け、女性ラッパーのレジェンドとなりつつある中で、ここにきてキャリアのピークであるようなヒットが連発しています。

■ Bad Habit / Steve Lacy (10/8~10/22) 3 Weeks

 

オルタナロックバンドThe Internetのギターリストで、ソングライター、プロデューサーも行うSteve Lacyの初の全米1位曲。10月8日から10月22日まで3週間1位を記録。1位獲得週はStreamingsが20.4Mで2位、Digital Salesが2,000回で38位、Radio Airplayが40.3Mで8位から7位でした。
Steve LacyはKendrick LamarやSolangeの作品を手掛けたことで知名度を上げ、2017年に「Dark Red」はTop40ヒットでないもののヒットしていたことで2ndアルバム発売前には注目されるようになっていました。そして2ndアルバム『Gemini Rights』は全米7位に登場し、収録されていた「Bad Habit」は100位デビューしながら、Tiktokでバイラルヒットとなり1位にたどり着きました。100位デビューからの1位は12曲目で、つい最近ではGlass Animalsの「Heat Waves」がありました。曲はシンプルなギターのリフをバックにしたギターポップで、曲の後半に別の曲がくっつく複合的なナンバー。メロディの感じは70年代のTodd Rundgrenのようで、最近の流れであるR&Bのロック化路線を象徴するようなヒットでもありました。

■ Unholy / Sam Smith & Kim Petras (10/29) 1 Week

 

 

ロンドン出身のシンガーソングライターSam SmithとKim Petrasの全米1位曲。Kim Petrasは勿論のこと全英チャートでは8曲の1位を持つSam Smithにとっても初の全米1位となっています。10月29日付けの1週間1位を記録し、その週はStreamingsは25.3Mで1位、Digital Salesは19,000回で1位、Radio Airplayは21.5Mを記録しています。
Sam Smithといえばバラードが主に印象的でしたが、この曲は聖歌隊のようなコーラスをバックに東洋的なメロディとエレクトロを混ぜたようなダンスポップで、ストリップクラブで妻を裏切る家庭的な夫について歌われています。「Unholy」のタイトル通りおどろおどろしい怪しいタッチで、PVもまたSam Smithの踊りとともに強い印象を残しました。また、Kim Petrasはトランスジェンダーを公言したアーチストとして初の全米1位獲得という話題もありました。

■ Anti-Hero / Taylor Swift (11/5~12/10,1/14~1/21) 8 Weeks

 

 

ペンシルバニア出身のシンガーソングライターTaylor Swiftの9曲目の全米1位曲で、この時点では最大のヒット曲。11月5日から1月21日まで不定期ながら8週間1位を記録し、最初の1位獲得週にはStreamingsが59.7M、Digital Salesが13,500回、Radio Airplayが32Mを記録しています。しかもこの11月5日の週はアルバム『Midnights』が発売したことで、Top10全てをTaylor Swiftが占めてしまったことで、これは史上初めての出来事となりました
「Anti-Hero」は明るくてサビのキラキラとしたメロディが印象的なポップナンバーですが、歌詞はTaylor Swift自身が名声を手に入れたことで人間らしい生活ができなくなったことに対して、ヒーローの資格がないということを歌った歌です。サビではアンチヒーローを常に応援するなんて疲れるに決まっていると自虐的な歌詞になっています。この『Midnights』の大ヒットから2023年はEras Tourの話題、2枚の再録音盤の大ヒットとTaylorのキャリアのピークを迎えました。