2023年 管理人が選ぶBest Album | ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

ver.5 - 洋楽チャートをデータと共に

過去と現在の洋楽シーンをチャートデータをもとに紹介するページ(週一更新予定)

■ 2023年 管理人が選ぶBest Album

1: Knower Forever / Knower
2: Let's Start Here / Lil Yachty
3: Jaguar Ⅱ / Victoria Monet
4: Guts / Olivia Rodrigo
5: Desire,I Want To Turn Into You / Caroline Polachek 
6: The Land Is Inhospitable And So Are We / Mitski
7: This Is Why / Paramore
8: Sundial / Noname
9: Utopia / Travis Scott
10: Heaven Knows / Pinkpantheress

Boygenius、Sufjan Stevens、Janelle Monae、Kali Uchis、Laufeyは外れました。それでは惜しくも10位に入れなかった5枚を紹介します。

15: Get Up Ep / Newjeans

EP仕様は普通は選ばないものなのですが、このEPについては1曲目にバンド名の「Newjeans」で始まり、シングルが次々と入り、Interludeも挟んでラストもしっかり締めるという完璧な構成で、パッケージとしてとても完成度が高いものでした。曲はどれもポップでメロディアスで、ソウルフルで美しく、バンドのスター性も感じさせられます。Epとしてもこのアルバムがどこまでもブレイクアルバムとして評価されるのではないかと思います。


Newjeans / Newjeans

14: 10.000 Gecs / 100 Gecs

待たされること2年。ようやくでた100 Gecsの『10,000 Gecs』ですが、確かに期待に応えるハイパーポップは素晴らしいのですが、アルバム1曲目から全力疾走という感じで、ゴール前の9曲目のポルカ「I Got My Tooth Removed」でずっこけてしまったという感じ。カエルの歌もオバカでそれはそれで悪くないのですが、ポルカだけはアルバムの全体の流れをブチッと切ってしまったのが多分AOTYなどで評価が高くなくなってしまった要因と思います。


Doritos & Fritos / 100 Gecs

13: That! Feels Good! / Jessie Ware

今年は普通にTop10に入るものが落ちてしまってますが、このアルバムはTop10内はもちろん上位でも良かったほど完成度の高いダンスポップアルバムで、アルバムの入りからラストまでしっかりとした構成ですが、なぜか前作よりもまとまってしまったような感じもしました。改めて聞いてもインパクトが弱くてこの上のアルバムより上にはならなかったというのが正直なところです。


Pearls / Jessie Ware

12: Scarlet / Doja Cat

前作の成功から一気にダークになった感のあるDoja Catの新作ですが、しっかりと「Paint The Town Red」も「Agora Hills」もヒットしてさらに面白い存在となってきました。1曲目から最初の怒濤のダーク路線は賛否両論ですが、後半は90年代のHip Hopを彷彿とさせる曲もあったり美しいメロディが続いたりして、後半だけ結構リピートすることも多かったです。


Attention / Doja Cat

11: Zach Bryan / Zach Bryan

カントリーアーチストだけど、Bruce Springsteenのかつてのアルバムを彷彿とさせるロックなアルバムで、最初の語りから、アメリカ国家が流れてドライブ感のある「Overtime」に続くのが「Born To Run」みたいでカッコイイ。中盤の9曲目「Jake's Piano/Long Island」から11曲目「I Remember Everything」でヤマもあって2024年もシングルヒットがまだまだ出そうなぐらいに充実したアルバムでした。


Overtime / Zach Bryan

ということで10位から

10: Heaven Knows / Pinkpanthress

 

Sound Of 2022のトップに選ばれたイングランドBath出身のソングライターPinkpanthressのデビューアルバムですが、正直「Boy's A Liar Pt.2」が最後に入っているのがいらないと思うほど完成度が高いアルバムでした。トランスの早いテンポに導かれて1曲目からたたみかけるように3曲目に入っていくあたりで心が掴まれます。アルバム全体で軽快で美しいメロディの一方で「Ohelia」に代表される闇を感じさせられる世界も独特で、最後の「Capable Of Love」まで内容は充実していたと思います。トランスがベースでここまでのバラエティ感が出せているものはあまり聞きません。


Another Life / Pinkpanthress f. Rema
Mosquito / Pinkpanthress
Capable Of Love / Pinkpanthress

9: Utopia / Travis Scott

 

テキサス州Houston出身のラッパーTravis Scottの2018年の『Astroworld』以来となる4枚目のアルバム。前作はTravis Scottをトップラッパーに押し上げたのみならずそれ以降のヒップホップの流れまで作ってしまった印象がありました。待望のアルバムは期待に応えるべく楽曲は練り込まれ、さらに全体でロックテイストという実験的な部分も含めて充実作でした。「Modern Jam」のリズムは心躍りましたし、10ccかと思うほどメランコリックな「My Eyes」、Pink Floydの曲かと思うほどの「Paraseil」、Kanye Westのような「Lost Forever」。FutureとSzaを使いながら漂うような「Telekinesis」と刺激を受ける曲も多く、市場の反応が思ったよりも伸びなかったのが意外でした。


Modern Jam / Travis Scott f.Tezzo Touchdown
My Eyes / Travis Scott
Telekinesis / Travis Scott f. Future & Sza

8: Sundial / Noname

 

イリノイ州シカゴ出身のラッパーNonameの2枚目のアルバム。Mixtapeのリリースで公開されたジャケットは年をとった女性で、売れるというか注目されることに全否定の姿勢で、しかも歌詞が1曲目の「Black Mirror」から「人と反対の意見をもつ社会主義のシスター」と歌い出して2曲目「Hold Me Down」で「手を取り合っていこう」と呼びかける尖りっぷり。ただアルバムそのものは聖歌隊のコーラスをバックにアルバム全体美しく躍動感があり、最後まで聞かせる充実したアルバムでした。中盤「Potentially The Interlude」の徐々に熱を帯びていくラッピンは素晴らしく、続く「Namesake」は大御所Jay-Zを含めたメディアを批判する内容のもので今年のメディア選にも入っていました。


Black Mirror / Noname
Hold Me Down / Noname
Namesake / Noname

7: This Is Why / Paramore

 

テネシー州Franklinで結成されたParamoreの6枚目のアルバム。パンキッシュでありながらグルーブ感があって、ポップだけど刺激的を両立している希有なアルバム。1曲目の「This Is Why」から最後の曲まで起伏を交えて聞かせます。それぞれの曲のアプローチが違っていながら実は洗練されている、どの曲を切り取ってもシングルとしての魅力があるポテンシャルは見事です。
 

This Is Why / Paramore
The News / Paramore
Running Out Of Time / Paramore

6: The Land Is Inhospitable And So Are We / Mitski

 

日本の三重県出身のインディシンガーMitskiの7枚目のアルバム。まるでかつての西部劇のようなクラッシックな映画を見ているような感覚のあるアメリカンなアルバムで、のどかでもあり躍動感もあり、それでいながら狂気な面もアクセントとしてあって、アルバムが独特でありながら完成度の高いものでした。シングルヒットしている「My Love Mine All Mine」はアルバムの構成の中でも中心的なピークで癖のないスタンダードなバラードということで2024年の大ヒットが待たれます。


Bug Like An Angel / Mitski
My Love Mine All Mine / Mitski
The Frost / Mitski

5: Desire,I Want To Turn Into You / Caroline Polachek 

 

ニューヨーク出身のシンガーソングライターCaroline Polachekの4枚目のアルバム。Pitchforkが年間ベストシングルに3年連続で選ぶほど押しっぷりで注目を集めてました。Lady GagaのようなエレクトロポップでボーカルはKate Bushのような感じもあり、音楽も複雑で癖があってというアートポップ。「Sunset」のような東洋的なわかりやすいメロディもあったりして、一つシングルヒットが出れば大スターになりそうな爆発力が秘められたアルバムです。


Sunset / Caroline Polachek
Bunny Is A Rider / Caroline Polachek
Billions / Caroline Polachek

4: Guts / Olivia Rodrigo

 

カリフォルニア州Murrieta出身のシンガーソングライターOlivia Rodrigoの2ndアルバム。ここまで振り切ったロックアルバムを出してもどこかで商業的な匂いが感じさせられはしますが、売りに来ているならこんなアルバムはまず出ない。時代のトレンドとは違った70年代後半から80年代のロックテイストが満載で、これを影響力のあるOliviaがやっているという点が凄いです。「Vampire」も「Bad Idea Right?」も「Get Him Back」も攻撃的でありながらポップで聞きやすく、時代をリードするアーチストのアルバムと思いました。
 

Bad Idea Right? / Olivia Rodrigo
Vampire / Olivia Rodrigo
Get Him Back / Olivia Rodrigo


3: Jaguar Ⅱ / Victoria Monet

 

ジョージア州Atlanta出身のソングライターVictoria Monetのデビューアルバム。もともとAriana Grandeの「Thank U Next」や「7 Rings」を書いているソングライターですが、アーチストとしてのパフォーマンスがここまで凄いとは思いませんでした。アルバムは1曲目「Smoke」からリプライズで繋げて最後の「Good Bye」まで起伏ある完璧な構成の充実の内容。特に後半は言葉が出ないほど美しい曲が並び「How Does It Make You Feel」や「Stop(Askin Me 4shyt)」、Earth Wind & Fireも参加している「Hollywood」はお気に入りです。


Smoke / Victoria Monet
How Does It Make You Feel / Victoria Monet
Stop (Askin Me 4Shyt) / Victoria Monet

2: Let's Start Here / Lil Yachty

 

ジョージア州Mableton出身のラッパーLil Yachtyの5枚目のアルバム。衝撃という意味では今年1番だったかもしれません。しかも1月発売で、この順位は今年のM-1並にありえないことです。アルバムは1曲目からギターが叫びまくるプログレッシブロックでPink Flyodの『狂気』を思わせるサウンド。それがどの曲も高いクオリティで続くもので、最後の「Reach The Sunshine」で華々しくエンディング、そしてオープニングを被せてくるという隙のないアルバムです。


The Black Seminole / Lil Yachty
Running Out Of Time / Lil Yachty
Drive Me Crazy / Lil Yachty


1: Knower Forever / Knower

 

ロサンゼルス出身のLouis ColeとGenevieve ArtadiのコンビによるKnowerの5枚目のアルバム。Louis Coleが鬼才として注目を集めて、家の中でライブをする「Live Sesh」シリーズがあってのこのアルバムで、バンドとしての充実感があって、Genevieve Artadiのボーカルの魅力にまず驚かされます。そしてバックに入ったときのLouis Coleのドラムが凄くて、曲はJazz要素たっぷりですが、大体Louis Coleと他の楽器かボーカルがガチンコ対決をしているような構成で、音楽の楽しさが詰まったおもちゃ箱のようなアルバムと思いました。
どの曲も楽しいのですが、Louis Coleのドラムが凄い「The Abyss」、これぞフュージョンという感じのギターが楽しい「Do Hot Girls Like Chords?」、最後の大団円という感じの「Crash The Car」を今回は紹介します。


The Abyss / Knower
Do Hot Girls Like Chords? / Knower
Crash The Car / Knower

ということで今年の更新はこれで終わり。1年ありがとうございました。