「SOC理論」というものがあります。
人は年をとることで、どうしても失うものが増えていきますよね。
病気を患うこともあるし、若い頃に比べれば身体の動きも鈍くなります。
親しい人を亡くして、心の交流が減ることだってあります。
そんな否応なしに「喪失」を感じやすい高齢期であっても、「その時の自分に合わせて工夫すると人生は充実して楽しめる」というのがSOC理論です。
これはあくまで高齢期の人を対象とした理論ですが、若い方にも十分応用できる理論なんですよ。
SOC理論の手順を簡単に説明すると、こんな感じになります。
①目標を下げる
②今持っているものを工夫してみる
③「サポート」を上手に使う
例えば、これまでボールペンで緻密な絵を描くのが趣味だったAさんが、歳を重ねるにつれて視力が落ちてしまったとします。
Aさんがここで緻密な絵を描けないことを嘆き、絵を描くことから離れてしまったら、Aさんの人生は一気に色あせてしまうかもしれません。
SOC理論では、まず「失ったもの」に合わせて目標を下げてみます。
Aさんは、Aさんが得意だった緻密な絵を正確に見ることが出来るほどの視力はもうありませんが、視力自体が無くなってしまったわけでもありません。
そこで、緻密な絵ではなく、もう少しサイズの大きな絵や、のびのびした線で絵を描いてみる。これが「目標を下げる」の例です。
もちろんAさんが本来得意だった「緻密な絵」を手放す悲しみは、別の絵で置き換えられるわけではありません。
でも、喪失を悲しむままにしておいたらどうなるでしょうか?
「視力が落ちる」という喪失が、「緻密な絵が描けない」という次の喪失を呼びます。
でも、それを放置すると「楽しみの喪失」「絵を見せて交流する機会の喪失」「生きがいの喪失」…と喪失が増えてしまうんです。
目標を下げて、「今の自分に合ったやり方でやってみよう」と思うことで、ドミノ倒しのように大きな喪失へと広がっていくのを防ぐことが出来ます。
Aさんは緻密な絵を描けるだけの力があるのですから、線を丁寧に引いたり、時間をかけて一つのことに取り組む力はあるかもしれません。それを生かして新たな作風に挑戦してみることが、②の「今持っているものを工夫する」の例です。
そして、それでも見にくい場所には虫眼鏡のような拡大鏡をつかってみたり、新しい作風の教室に通ってみたり、「サポート」を得ます。
サポートはもちろん人でも物でも、知識でも良いですよね。
目標を今の自分に合うものに設定して、自分が今持っているものやサポートを上手く活用しながら楽しんでいく。
それがSOC理論です。
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