あるクライアントAさんは、「自分でやる」ということにとてもこだわります。
「人に助けてもらうと、自分の手柄じゃなくなる感じがする」
のだそうです。
だから夜遅くまで一人で働いてボロボロになって、辛いからカウンセリングにいらっしゃいます。
心も体もボロボロになっていても、自分の手柄を取られる恐怖に勝つことができません。
別のクライアントBさんは、Aさんとは反対で何事もやり遂げることができません。
Bさんはそれが嫌なので、「今度こそ」と何度も挑戦したのですが、全部途中でやめてしまいました。
「どうせやれないなら、あんなことしなきゃよかった」と後悔して、カウンセリングではいつも自分への不満でいっぱいです。
このAさんとBさん、面白い共通点があります。
それは、母親の口癖が
「だから言ったでしょ」
ということ。
お二人のお母さんは、おふたりの成績が落ちた時、何か失敗した時、そしてうまくいった時ですら、「だから言ったでしょ」と言っていたのだそうです。
「だから勉強しなさいって言ったでしょ」
「だからこっちの学校がいいって言ったでしょ」
「だから最初からこの服にすればよかったのに」
「だから言ったでしょ」という言葉の破壊力は、結構すごいんですよ。
例えばAさんが勉強しなくて成績が落ちた時、お母さんは「だから勉強しなさいって言ったのに」と怒ります。
そうすると、ただでさえ落ち込んでいるAさんに「お母さんが正しくてAは間違い」という強烈なパンチが入ります。
Aさんは「勉強をしなかったから成績が落ちた」とだけ思っていたのに、「正しい母親が導いたのにAが道を誤った」という、全然違う方向からのダメージが与えられてしまうんです。
またBさんは、母親にC高校がいいよ、と言われながらもD高校を志望していました。
でも、模試の結果を見て、C高校にしておこう、と考えなおしました。
するとお母さんが、「だから最初からそうすればよかったのに」と言います。
Bさんは、自分なりに考えて行動し、その結果軌道修正に成功しただけです。
でもそこに、「だから言ったでしょ」というニュアンスが入ることで、「正しい母親が答えを教えてあげたのに、Bは逆らったために痛い目にあった」のようなダメージが与えられます。
Bさんは自分で道をきちんと選んでいることを誰にも認められずに、かえって「Bが選ぶ選択肢は間違い」というメッセージを入れられてしまいます。
おそらく、母親には母親なりの気遣いがそこにはあったはずです。
失敗してほしくなかったり、将来が心配だったり。
「道を誤らないで」、という母親の恐怖が、
結果としてAさんBさんの、「道を誤る罪悪感」を生み出しました。
それが、
Aさんは「自分の力だけで成功させて道を誤らない」
Bさんは「動かないことで絶対に道を踏み外さない」
になったのです。
「母親が悪いので言葉選びに気を付けましょう」というお話ではなくて、こういう物語が、誰の人生の中にもありえるんです。
AさんとBさんの母親もまた、自分の母親との間で似たような物語があったかもしれません。
大事なのは、気づいて手放していくことだけ。
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