「否認」という言葉をご存知でしょうか。
アルコール依存症の方に、
「お酒飲んでますか?」
「酔っていますか?」
などの質問をしたとします。
これに対して、
本当は飲酒をしているにも関わらず
「飲んでいない」
「酔っていない」
と反射的に答えてしまうのが否認です。
否認というのは
心理学や精神分析の側面からよくいわれる、人間の「防衛機制」の一つであり、とても簡単に言えば、「現実を受け入れられない・認められない」という状態です。
これは「受け入れない、認めないことで自分を守ろうとしている」と言えますが、しかし、防衛機制というのは得てして優しくも不器用です。
なんとかして「心」を守らなきゃと思うあまり
目や耳をそっとふさいでしまうようなこの機能は、
「見ない」「聞こえない」という安全(に見える)世界も作ってくれますが、
そこから抜け出し先へ進むときには大きな壁ともなりえます。
ここまで書きましたが、
アルコール依存症の方の例だと大事に感じたかもしれませんね。
では日常の中でのこんな例ならどうでしょうか。
容姿のコンプレックスを「気にしていない」と言う。
過食の傾向があるのに「食べていない」と言う。
困っているのに困っていないふりをしてしまう。
「ここがあなたの問題ですよ」と言われても「大丈夫です」「平気です」と答える。
どれもこれも、自分の問題を理解できていないわけではありません。
本当は自分の「見ないふりをしている現実」をちゃんと把握できているからこそ、正面から向き合うのがあまりにも怖くて、否認してしまうんです。
そのままでもいいのなら、それでももちろんいいでしょう。
だけど、否認を続けていると、
自分の隠している現実が暴かれるのが怖くて
やたらと他人を警戒したり、
変わりたいと思っているのに
変わるきっかけから逃げるクセがついてしまう。
そんな自分が嫌だからこそ、
「変われるはずだ」と分かっているからこそ、
あなたは出口を探してずっともがいているはずです。
あなたが自分の現実と直面して
自分のことが大嫌いだと思った瞬間でも、
あなたの本質的な価値は何も変わらず輝いています。
隠してきた苦しみを知って
絶望してしまうような時があっても、
それを口に出来るなら、支える手が必ずあります。
大丈夫と言い聞かせるのはやめて
「困っています」「つらいんです」と口に出しましょう。
向き合った人は、向き合う前の何倍も強くなって
それはそれは美しく変化していきますよ。
人生が変わるというのは、きっとこういうことを言うのだろうと私はたまに思います。
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