三日坊主を恐れない -21ページ目

200バーツの運賃②-10

カンチャナブリーを出た列車は

「戦場に架ける橋」で有名なクワイ川鉄橋を渡り、
岩を豪快に爆破して作られた切り通しや、
岸壁に張り付くような不安定な線路をゆっくりと走った。
1時間ほど、通勤電車並みの混雑ぶりの中、ワイワイと賑やかに走り、
終点ナム・トクの一つ前の駅に着いたところで、

半分以上の乗客が降りていった。


え?降りちゃうの?
あの混雑で通路に立っていた人は外見えてたの?
たおやかに流れるクワイ川とか、切り立った崖とか見えてたの?


ツアーはこれだからつまらんよね。
あのカンチャナブリーから乗ってきた団体旅行客のたどるコースは、
バンコクから冷房完備の観光バスでカンチャナブリーに行き、
そこからナム・トクの一つ前の駅まで泰緬鉄道に乗る。
その駅には、バスが迎えに来ていて、

それでバンコクへと戻って行くというものだ。


もちろん時間的には効率が良いし、カンチャナブリーの観光もできる。
列車で見れないいいこともたくさんあるだろう。
でも、あの車内販売にも会えない、

あのトイレで用も足せない、あの強風も受けられない。
そして何より、車窓の風景を眺めながら

ゆっくりと物思いにふける時間を満喫できない。


ぜひ、自分で列車に乗ろうじゃないの。
のぞみで広島に行く5時間より短く感じるよ。


再び静かになった列車は、1時間半ほど走って終点ナム・トクに到着した。



戦場に架ける橋
↑これぞ見たかった光景!石丸謙二郎さん、やりました!



※この旅行記は、2005年2月のモノです。


200バーツの運賃②-9

カンチャナブリーに着くと、それまでのガラガラっぷりが嘘のように、
遠足らしき現地の小学生やら白人の団体旅行客やらが

大挙して乗り込んできた。
車内は一気に日本の通勤電車ばりの混雑で、
4人掛けのBOX席に6~7人座ったり、

通路にもぎっしりと人が詰まった状態になった。


向かいに座ったのは、デンマーク人のカメラ好きの女性。
その隣には現地ガイドの女性。
ギッシリと密着状態なので、否が応でも会話が耳に入る。


「どんな国の人が観光に来るのかしら?」


「もう、ほんと色々よ。アメリカ人、イギリス人、フランス、イタリア…
あなたのようにデンマークの人もよく来るわね。
そうそう、この前なんてね、うふふふ…
イギリス人とドイツ人が混じったツアーがあったのよ。
彼ら、普通に仲良く会話を楽しんでたわ。うふふふ…」


「そう…彼らも彼らの先祖も、たくさんたくさん話し合ってきたのよ。
たくさんたくさん話し合って、分かり合ってきたのよね。
ここの戦争博物館に行ったけど、出口のノートに日本人が

『ごめんなさい。本当にごめんなさい』ってたくさん書いていたわ。
日本人とあなたたちタイ人も、たくさんたくさん話し合ってきたのよね」



……。
そう、カンチャナブリーは第二次大戦中に、

日本軍が大量虐殺をした町。
ここから先に続く泰緬鉄道は、

日本軍が捕虜やタイ人に強制労働をさせて作らせた鉄道。
今でこそ、観光列車として多くの観光客が訪れる

風光明媚な鉄道となっているが、
かつて「死の鉄道」と呼ばれた鉄道なのだ。
浮かれた観光気分だったが、その会話に気の締まる思いになった。


日本人である私に対してもとても親切に微笑みかけてくれたタイの人々、
隣で私の肩に頭を預けて眠っているタイの小学生。

カンチャナブリーの戦争博物館の出口には、
「Forgive But Not Forget(許そう、だが、忘れない)」
と書かれているという。

次に来るときは、カンチャナブリーで下車して訪れたい、そう思った。



女の子と車窓
↑窓から外を眺める現地の女の子。遠足スポットのようだ。



※この旅行記は、2005年2月のモノです。


200バーツの運賃②-8

車窓を流れる風景は、水田、民家、パパイヤ畑、さとうきび畑、蓮畑、牛…。
なんてのどかな…。
と、言いたいところだが、

のどかな風景とは裏腹に、のどかな気分になりきれない。

何せ、車内にはものすごい強風が吹き荒れているのである。

空調一切無しの3等車は全ての窓が全開なのである。
ずっと、ゴゴゴ…ズバババ…ブバ…と耳元で風がうなっているのである。


目もまともに開けていられないような強風なので、
試しにデジカメで自分の顔を撮ってみたのだが、
ディスプレイに映し出された自分は、髪は風にあおられてぐしゃぐしゃ、
強風で頬の肉がゆがみ、目が開けられないから半目というヒドイ状態…。

あまりの形相に、ひとりで膝を叩いて笑った後、

ふとむなしくなって一変、膝を抱えた。
なんで、自分で撮影した、自分のヒドイ顔を見て、

自分で、ひとりで、笑っているんだと。
それってホントは向かいに座った誰かの顔を見て笑い合うんじゃないのかと。

ふぅ…。


それでも、窓の外には、水田、民家、パパイヤ畑、さとうきび畑、蓮畑、牛…。


のどかさがむなしさを助長する中で、

気分を盛り上げるいい方法を思いついた。
風の音ばかりで、周りの音なんて全然聞こえないのをいいことに、

歌うことにしたのだ。
声を出して歌っても、周りの客は気にも留めない。
車窓を流れるのどかな風景を見ながら、
Misha、プリプリ、ドリカム、相川七瀬、中島みゆき…

と好き放題に歌いまくった。

嗚呼、歌って素晴らしい。


気分も上々になってきたところで、

トンブリーを出てからから2時間半が経っていた。
カンチャナブリーは、もうすぐそこだ。


車窓の風景
↑どこか懐かしい、のどかな風景。



※この旅行記は、2005年2月のモノです。