200バーツの運賃②-7
片道5時間も列車に乗りっぱなしとなると、気になるのはトイレ事情である。
バンコクの街中は、観光ポイントにもショッピングセンターにも
トイレがあるので困ることはなかったが、列車の中はどうなのか?
350mlのコーラをゴクゴクのんだらさすがにトイレに行きたくなってきた。
車内が空いていて、座席確保の心配がないことから、
とりあえず、日本の長距離列車ならトイレがありそうな、
車両と車両の間に行ってみた。
おっ なんだかドアがある。
ドアに書かれたタイ語の文字列はまったく読めないが、
ガタガタとノブをいじってみた。
開かない…。
誰か入っているのか、トイレじゃないのか分からないが、
今度は前方の車両と車両の間に行ってみた。
同じようにドアがある。
今度は開いた。やったートイレ発見!
しかも…で、出たー!!
別にトイレの花子さんが出たわけではない。
南国特有超巨大ゴッキーが出たわけでもない。
そこにあったのは、タイ式便器。
街中で一度も出会わなかったタイ式に、ここで出会ってしまった。
タイ式とは、洋式便器の便座の上に和式に座るような形式のモノである。
とどのつまりが、あの高さの上にしゃがむわけで、
何もこの不安定な揺れのある列車の車内で
出会わなくてもよかろうという代物である。
とはいえ、郷に入らば郷に従え。
みなさんがしゃがんでる便座に座るわけにもいかないので、
タイ式に用を足した。
案の定、列車が揺れるたびに、
便器から転がり落ちそうになるのを必死にこらえることとなった。
なんとか無事用を足した後、
出会った記念に写真を一枚撮らせていただいたのだが、
そのとき、超激しいノックがドアを遅い、
危うくカメラを便器に落としそうになってしまった。
「ちょ、ちょ、ちょっとと待って…」
思わず日本語で言いながらドアを開けると、
タイ人のおばちゃんがタイ語をホニャホニャと発し、
高らかに笑いながらトイレの中に消えていった。
「長いトイレだったわね」とでも言っていたのだろうか…。
後にも先にも、この車内でしか出会わなかったタイ式便器。
それでもまだ、タイでは、洋式便器に和式に座って
便座が壊れる被害が多く報告されているそうだ。
※この旅行記は、2005年2月のモノです。
200バーツの運賃②-6
おじいさんの乗った列車が発車してすぐ、
機関車を付け替えたナム・トク行きの列車がホームに戻ってきた。
おかえり、私の『世界の車窓から』。
おじゃまします、私の『世界の車窓から』。
中に入ると、想像してたよりこぎれいな車内で、ちょっとビックリした。
が、思った通りに硬そうな、
思った以上に直角な木製の4人がけBOX席である。
この椅子に私のお尻は10時間耐えられるのだろうか…
そう心配しながらも、事前にネットで得た、
「前でも後ろでもいいから端の車両の進行方向左側の席に座るべし」
という情報に従って、一番後ろの車両の左側に座った。
乗ってから、野良犬が列車の下に入り込むというトラブルで、
発車時間が予定より5分ほど遅れ、
7:50に列車はナム・トクに向けて走り出した。
同じ車両の乗客は、私の他に現地人が5~6人と、バックパッカーが1人。
いい感じに『世界の車窓から』気分が盛り上がる。
しばらく走ると、車内販売(?)でカゴを担いだおばちゃんやおじちゃんが、
食べ物や飲み物を売りに来た。
目が合ったおばちゃんがニッコリ笑って寄ってきたので、
もち米のおにぎりと豚肉の串焼きをひとつずつ買って食べた。
次に飲み物売りのおばちゃんが寄ってきた。
豚肉の甘辛さでノドが乾いていたので、何か買おうとカゴを覗き込む。
おばちゃんは、コーラ、ファンタ、スプライト、レモンティー…
と色々勧めてくれるが、決して私にビールを勧めようとしない。
また、私を子供扱いしているな、このおばちゃんめ!
ひとりで列車乗って偉いわねぇとか思ってるんだろ、ちくしょーめぃ!
タイ人総出で私を子ども扱いしやがって ちぃっ!
コホン…じゃ、じゃあ、コーラで。
いや、あの、子供じゃないけどさ、
ビールは嫌いなんだからしょうがないじゃない。
次に私が来るときには、チューハイの1本や2本入れといてよ~。
※この旅行記は2005年2月のモノです。
200バーツの運賃②-5
「あの列車は、これのあとに出るヤツだよ」
「ホントにホントに?!」
よほど、茫然自失のひどい顔をしていたのだろう。
見かねて声をかけてきた中華系タイ人のおじいさんは、
わざわざ列車を降りて私の方へやってきた。
そして、チャイニーズ・ニュー・イヤーの最終日を
末の娘を一緒に過ごすのだというそのおじいさんと、
成り行き上、列車の発車時間まで話をすることになった。
やたらと英語の達者なそのおじいさん、
私に「これだけは覚えておけ」というタイ語を英語で教えてくれた。
英語で言うなら「How to get to~?」、
日本語で言うなら「~へはどうやって行くのですか?」というフレーズだ。
おじいさんの後に続いて、何度も言わされたが、忘れてしまった。
いや、もはや英語と日本語とジェスチャーで生きていけると高をくくって、
覚える気がなかったのかもしれない。
が、そんな勉強不熱心な私と対照的に、
おじいさんは私にひとつ日本語を教えてくれと言う。
Beautifulは日本語でなんと言うのかと。
別にBeautifulの意味が分からなかったわけではないが、
さて、なんと教えようかと一瞬迷った。
「美しい」か「キレイ」か。
ちょっと迷った後、発音のしやすさと実用性の高さからいって、
「キレイ」にすることにした。
「キ・レ・イ」
「ケ・リ・エ?」
「No No! キ・レ・イ」
「キ・リ・イ?」
「キ・レ・イ」
「キ・レ・イ?」
「Yes! キレイ!」
「OH! キレイ!」
こうして、なんとか「キレイ」を覚えた頃、
おじいさんの乗る列車の発車時間となった。
別れ際、窓から手を振るおじいさんは言った。
「c-ma キレイネ~」
「サンキュ~」
うん、思ったとおり、「美しい」より「キレイ」が実用的だった。
※この旅行記は、2005年2月のモノです。

