トリル
今住んでいる貸家を見つけてくれたアニータ(女性50代)、
ダンボのような、元ジャパゆきの彼女、
羽振りの良かった時に建てたコンクリートの平屋は、
全くメンテナンスされてなく、
今でもフィリピンでは珍しいアルミサッシだけが、
当時の羽振りを残しています。
アニータ「ちょっとオカネ貸してもらえますか?」
ボク「ぁ~きたかぁ」とココロの中、
これでフィリピンへ来て、借金をお願いされたのは、
4回目、3回は貸し、1回は断ります。
まぁ、現地の人と付き合うと、
日本人ならば少なからず、経験あるのでしょう。
今でも、それなりに通じるニホンゴを話すアニータ、
彼女と知り合って1年以上になり、
彼女と、彼女より太った娘(父親は日本人)、
そして父親が違う弟と、三人家族。
今、日本人の父親(すでに死亡)が、
生前、認知書類にサインしてあり、
その書類審査プロセス中で、
承認されれば、娘は日本のパスポートを手にでき、
アニータには日本の永住ビザが与えられるでしょう、
相当な時間がかかりますが。
まぁ彼女、正直は正直な人ですし、
何よりも、貸家を見つけてくれたわけです、
ボク「 Pila ? / いくら?」
アニータ「 2,500 ペソ」と、ニホンゴで。
「娘の卒業前に、小論文を表紙をつけて、
二部印刷して提出しなきゃいけないの」
なんか、フィリピンの学校ってほんとメンドーくさいなぁ、
そう思いながらも(全ての学校ではありません)、
ボク「いいよ、でも一筆書いてね、
名前、金額、返済日を」
手書きの借用書をリュックサックに入れ、
破れたままの網戸のアルミサッシドアを出て、
塀の内側、ぶら下げられたレジ袋の中、
黒と赤のパッケージ、パンシット・カントンという、
焼きそば辛口の空袋が折り重なっています。
フィリピンで最もポピュラーな焼きそば、
スーパーでは棚にビッシリ押し込まれ、
商品最上段は上の棚につっかえてしまい、
引き出せず、二段目をそっと引き出すほどです。
辛く塩っぱいその焼きそばは、
オカズとしても食べられ、
それゆえ、塩っぱい味つけなのです。
そのオカズと、たくさんのライス、
アニータの家の過去何回かのテーブル上、
一瞬その光景が浮かび、さっと目を閉じます。
そうすれば、目にしたモノを忘れることが出来る、
そう願いながらサングラスをかけ、
錆びてきしむ鉄ゲートを押し開け、
家をあとにします。
続きます。