ケース 1-2 | 浮世離れした、半世捨て人のブログ

浮世離れした、半世捨て人のブログ

“ 暑くて、やってられねぇ〜 ”


     続きです 、



その筋の人に会いましてね

ヤクザ稼業の人です。


藤井さん(仮称男性50代)は、ここダバオへ、

日本人同士のお金の貸し借りで、支払いが滞り、

その集金を依頼され来たそうです。


「いかにも」なルックスの藤井さん、

「この稼業、もう42年になるよ」と、

アイスクリームでも選ぶように、

軽い口調で話しますが、

ハーフスモークのサングラス越しの目は、

柔らかいようにも、鷹のようにも見えます。



藤井さん、
「集金行くとね、みんな"信用してくれ"って、言うんだけど、オレは
"オレの手の上にカネが乗ったら、
あんたを信用するよ"そう言うんだよ」


トリル

フェイスブックのメッセンジャーで、

アニータから「支払いを少し待ってほしい」と英文、

ボク、「やっぱりなぁ、どうしようかなぁ」、

かといっても、どうして良いのやら分かりません。

ボク「いつ?」とだけ返信、

アニータ「あと1週間待って下さい」




ダバオへ来て2年、

その間、2回フィリピン人へお金を貸して、

2回ともボクの方から期日に連絡して、

「少し待って」と言われました。

前日にでも、相手から連絡があれば、

まだ、仕方ないなぁ、ですが。


要するに、ボクがナメられているわけで、

ナメられる、とはボクがフィリピン人に、

お金を貸す器ではないということです。

ですから、

もうフィリピン人には、絶対お金を貸さないと、

ココロに決めてはいたのですが。






11:30

返済期日、

なんとなく、連絡せずにアニータの家を訪ね、

プラスチックスツールにどっかり座った娘が、

ラップトップパソコンで必死に打ち込んでいて、

アニータ、
「もうちょっとだけ待って下さいね、
データをワタシの携帯へ移し、送り終わったら、この携帯をポウンショップ(質屋)へ入れます」

ボク、ただ頷き鉄ゲートの外で待ちます。


アニータ「ゴメンナサイね、待たせちゃって」

そう言い、トライシクルを拾い2人で乗り込み、

ボク「どこの店(ポウンショップ)行くの?」

アニータ、
「カルテックス(ガソリンスタンド)前の、
ゴールド・ラッシュ」


そのアグトン・ストリートも、

他の繁華街同様にポウンショップが多く、

ゴールド・ラッシュの両隣もポウンショップ、

ただ、多くの店が質草(しちぐさ)を取って、

お金を貸す、というよりも、日本では馴染みのない、

レミッタンス(小口送金)がメインのようです。



アニータは窓口の女性を知っているようで、

ボクからお金を借り、この質草で返すのよ、

そんなことを話しています。

まぁ、借金に関わる話は日常会話のフィリピン、

そういうことも普通に会話されていて、

店内で待つボクは居心地悪く、

それでも無関心を装い、

献血でもらったウチワで扇ぎ外を眺めます。




お昼時にマーケットでよく見かける、

バッジャオの親子、

バッジャオとは元々海沿いに住む民族(トライブ)、

それが物乞いとしても呼ばれています。


白が薄汚れたシャツを頭にかぶったお母さんが、

カルテックスの前を通り過ぎ、

その後を10歳くらいの細い男の子が続きます。

廃材木で作った松葉杖を両脇に、

ポリオ(小児マヒ)の障害が残る左脚を浮かせ、

松葉杖と右脚の三本で身体を送り、

彼の影は、その三本の間から出ることなく、

規則的に揺れています。




ボクはもうすぐ自分のお金を手にし、

あの藤井さんの言葉を思い出し、

アグトン・ストリートを眺めながら、

ただ思うことは、



ボクは今、フィリピンにいるんだ、と。