中小企業のコンサルティングに入ると、若手コンサルタントから「組織化しましょう」「権限移譲しましょう」という提案が出ることがあります。

もちろん方向性としては間違いではありません。

 

しかし、安易な組織化や権限移譲には注意が必要です。

なぜなら、中小企業で社長以上に会社の将来を考え、責任を背負っている人はいないからです。

社長は経営責任者であり、会社の株式を持ち、借入金の保証をしていることもあります。どれだけ真面目で優秀な社員や役員でも、社長と同じ重さで責任を負うことはできません。

 

だからこそ、社長には「社長にしかできない仕事」に集中してもらう必要があります。

たとえば、新事業の構想、新規取引先の開拓、金融機関との交渉、資金調達、将来の事業戦略などです。

これらは、社員に丸投げして進むものではありません。

 

また、中小企業では社長がトップ営業をしている会社も多くあります。

コンサルタントは「社長が営業をやめて、社員に任せるべきだ」と考えがちです。

 

しかし実際には、社長が最も優れた営業担当者であることも少なくありません。無理に社長を営業から外すと、売上が落ちる危険もあります。

大切なのは、社長がすべてを最初から最後まで抱え込まないことです。

 

社長は、重要顧客との関係づくりや新しい商談の種まきに集中する。受注後の実務、納品、フォロー、定型的な営業活動は社員に任せる。

このように役割を分けることが重要です。

 

社長依存からの脱却とは、社長から権限を取り上げることではありません。

社長が未来をつくる仕事に集中できるようにし、社員には役割と目標を明確に与えることです。

その範囲の中で、社員が自分で考え、工夫し、会社の成長に貢献できる仕組みをつくる。

これが、中小企業に必要な本当の意味での社長依存からの脱却です。