”語り”が浮きあがらせる”心の声” | チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

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この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

体験の語りを通して、

過去の出来事の意味が創造されていきます。

 

出来事の一つひとつは、

語りを通じて今の自分とつながり、

出来事と出来事がつながることでストーリーが生まれてきます。

 

ストーリーが生まれると同時に、個々の出来事の意味が、

本人の内側で了解可能なものとなり、

出来事の背後にある自分の意志や

こだわりの真意が認められると、

自らの“心の声”の姿が見え始めてきます。

 

シリア出身で難民選手団のイブラヒムさんは、

砲弾に会って片足を失い、人生を大きく狂わされました。

 

障害を持つ難民として苦難の日々を送り、

様々な逆境を克服して練習を続け、難民選手団の代表として

リオや東京のパラリンピックに出場できるまでに実績を積みました。

 

彼は、難民として苦しんでいる人々に、

自分の頑張る姿を見せて勇気を与えたい、と語ります。

ここで、彼が人に与えたいと望む勇気の源が過去形のものでなく、

現在進行中のものである点に、注意を向ける必要があります。

 

リオや東京のパラリンピックに“出場した”という

過去の勲章で人々に語りかけるのでなく、

“今頑張る自分の姿“で人々を勇気づけたいというのが、

彼の望んでいることだからです。

 

イブラヒムさんの頭の中には、

ハンデを抱えながら頑張る自分の姿に勇気づけられ、

前を向いて歩き始める大勢の難民の子供たちの

映像があるのでしょう。

 

ここに、過去から未来へとつながる独自のストーリーの中に

今の自分を置き、そこに自身の存在意義を見い出す、

イブラヒムさんの生きる姿勢が見えてきます。

 

過去の体験を語ることは、

その体験の中に写し出される自分の生き方の確認作業であり

それは、自らの心の声をつかみ上げる機会でもあります。

 

そこに表現されたストーリーは、これから先の自分の生き方に

方向を与え、

 

語りと共にげ浮き上がってくる“心の声”を正しく捉えることが出来れば、

それは強烈なビジョンとなって、

自分を勇気づけてくれるもの(=希望)になり得ます。

 

“心の声”を別の言い方をすれば、“運命の導き“とか

(まだ会ったことの無い)“自分を待っている人々の声”などと

言いうるものです。

 

世界が私に求めているものは何か?

私を待ってくれている人々は誰か

その人々の期待はなにか?

期待に応える為に、私はどうしたらいいのか?

 

こうした問いへの答えは、全て自らする語りの中から

引き出すことが出来るものです。

 

あるものはすんなりと見えてくるかもしれないけれど、

あるものは、何度も何度も語り直さない限り、

見えてこないものかもしれません。

 

本物の“心の声”を聞くには、自分との深い対話が不可欠です。

そして、自ら体験を繰り返し語っていくことが、

その有効な手段であることは、ここで強調しておきたいと思います。