”かかわりの技術”が必要になっている理由(2) | チエでつながる, ワザでつながる、ココロでつながる、価値を生みだす           ~ 物語思考が世界をかえる

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この世に生まれて間もなく、人は「ものがたり」と出会い、そこで広い世界とのつながりを作ります。このblogでは、「ものがたり」と共にある人の可能性を探求していきます。

 
”モノゴトを考える”とは、
自身の経験に根差した世界観の下に
「仮説」を立てていくことだと書きました。
 
そしてその世界観は、
自ら主体的に周囲と相互作用を起こしていく中にしか
形成されないものだとも、述べてきました。
 
“世界観”を形成していく上で、
先輩や上司という存在は極めて重要です。 
 
実践の場の相互作用に於いて、
環境の多くを共有し実践的にも様々な類似項を持つ先輩や上司からは、
共感を伴って伝わる情報が多くあるからです。 
 
以下世界観形成に不可欠な2つの要素について、
順に見ていこうと思います。
 
新しい職場に入った新人や若手が
先輩・上司に学ぶ際、
知識の基盤を作っていく第一の要素は「ことば」です。 
 
すなわち、
目の前で起きている仕事の展開や外部とのやり取り、
人々のふるまいや態度などを、
先輩・上司がどう評価し表現しているのか。 
 
組織の仕組みや業界の構造を、
どう意味づけし、いかに活用しているかが
「ことば」を中核に置いて学習されるからです。
 
実際、私たちの世界観は「ことば」を中心に構成されています。 
 
何と何を同じグループで括り、
どれとどれを分割して配置・階層化するかは
「ことば」の機能によって可能となるものです。 
 
こうした作業が
外界を理解する上で決定的に重要なのであり、
仕事の場面でのこうした「分別」こそが、常に求められているものです。 
 
特にキーとなる「ことば」は、
現実の中に起きる他者との相互作用でしか学習できないものです。 
 
ここは理屈だけでなくまさに身体感覚が重要で、
複雑なニュアンスを含めて現実を理解していく際には、
上司・先輩・同僚といった身近で経験を積んできている人の存在が
極めて重要になってくるのです。
 
「ことば」と並んで影響を及ぼす二つ目の要素は、
先輩方の「語り」です。 
 
職場はどこもユニークな集団であり、
その集団にいるからこそ経験出来る特殊な物語を
日々紡いでいる場でもあります。 
 
日常には様々なことが起こり、
その都度異なる対応を迫られている様に感じたりするものですが、

実はそこに繰り返されているパターンや、
同一の根っこを持った意思決定が為されています。 
 
このパターンの多くは無意識に学習されているもので、
現実に立ち会ったり、上司や先輩の「語り」を解釈したりする中で、
現れてくる価値観やパターンを私たちは身体化しています。 
 
「語り」のパターンは、
話の筋道レベルで理解したとしても不十分なものです。
 
より主観的で感情的なもの、感覚的なものまでを含んでいるもので、
だからこそ「共感」なしで「語り」に現れるパターンを
認識することは極めて困難です。 
 
この感覚には人との関係、信頼の築き方や距離の取り方など、
組織が継承する人間観や人間関係観も含まれてきます。
 
つまり様々な状況の中で他者とどのように信頼関係を築き、
その関係をどのように維持・発展させていくのか。 
壊れそうになった時にどうするのか、
どういう相手となら長く関係を継続できるのか、

といった組織の運命を決めるような中核的な知が
そこには含まれている訳です。 
 
「ことば」や「語り」、
またそれらの中から継承される人間観、人間関係観は
生の相互作用の中でしか習得されない種類の知です。 
 
そして「仮説」は理屈の上に描くものではなく、
「ことば」や「語り」に包み含まれた感覚やニュアンスと
整合して描かなければなりません。 

それが弱い仮説は「机上の空論」です。
 
強い組織は、こうした世界観を育むことができる仕組みを
備えているものだと、私は感じています。
 
上に説明してきた「ことば」や「語り」は、
相互的なやりとりの中に現れて始めて、
知識として伝播されていくものです。
 
相互的とは、
主体と主体が刺激しあって創造的な営みを成立させている関係です。
 
先輩や上司、ベテランという
職階的または年齢的に上の側にいる方々が、
 
相互作用の場をそう方向付ける”かかわり方”が、
今日重要性を急速に高めているのです。