まいど~カエルさくらんぼ

生きもの大好きドキドキ絵本講師のくがやよいです。

 

 

先日、風文庫さんで見つけて購入した本。(200円でした)

 

 

『窓ぎわのトットちゃん』

黒柳徹子/著

いわさきちひろ/絵

講談社 青い鳥文庫

 

 

 

 

この本をはじめて読んだのは、たしか高校生の時でした。

それから数十年を経て 再会した本です。

 

 

ほんとうに懐かしく、手に取って、買って帰り、読み始めました。

 

 

小学校でいろんな子どもたちと過ごすことが多い今、

改めて読むと 「こんなにいい本だったのか。。。」

と しみじみ思います。

 

 

冒頭にはこう書かれています。

 

 

―― この本を、亡き、小林宗作先生にささげます。

 

 

 

~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

 

 

 

 

 

ちっともじっとしていなくて、

小学校の窓からチンドン屋さんを呼び込んでしまう

「もてあましもの」のトットちゃんが、

小学校を退学になった後、入学した「トモエ学園」。

学校長の小林宗作先生との出会いが

トットちゃんの人生を変えてゆきます。

 

 

「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」

 

 

トットちゃんを見るたびにそう言ってくれた小林先生の言葉は

トットちゃんに大いなる自信を与えてくれたのでした。

 

 

 

 

トモエ学園の校庭に並んだ 電車の教室。

 

学校に来たらどの科目からしてもいい勉強。

 

講堂に まぁるくなってみんなで食べるお弁当の時間。

そのお弁当には、必ず 海のものと、山のものを入れてくること。

 

校長先生が作ってくれた、校名だけの短い校歌。

 

勉強が早く終わったらでかける九品仏へのお散歩。

 

体が大きくならない病気の高橋くんが、

どの競技も必ず一等になってしまう運動会。

 

 

 

小さかったトットちゃんには当時はわからなかったけど

実はどの子もコンプレックスを抱くことなく育っていけるように

小林先生の考えられた教育方針が貫かれていたのでした。

 

 


小林先生の教育方針は、

 

「どんな子も、生まれたときには、いい性質を持っている。

それが大きくなる間に、いろいろな、まわりの環境とか、

大人たちの影響で、スポイルされてしまう。

だから、早くこのいい性質を見つけて、それを伸ばしていき、

個性のある人間にしていこう。」

 

というものでした。青文字は本文からの抜粋です)

 

 

音楽と自然が大好きだった小林先生は、ダルクローズに学び、

いち早くリトミックを日本の小学校教育に取り入れた人でもありました。

 

のびやかに、ピアノのリズムに合わせて弾むように動く子どもたち。

いろいろな「事件」を起こしつつも小学校が楽しくて仕方がないトットちゃん。

 

トモエ学園の先生と子どもたちの あたたかいつながりが

心に流れ込んできました。

 

 

 

 

短い章の合間に いわさきちひろさんの絵が散りばめられていて、

その挿絵を見るたびに

「いわさきちひろさんの絵が好き。」と言っていた友人を思い出しました。

その絵は、まるで ほんとうに

トットちゃんのことを描いているように見えました。

 



 

トットちゃんのパパとママもまた素晴らしい人でした。

トットちゃんと姉弟のようにして育った飼い犬のロッキーも・・・。

 

 

ロッキーとの別れ、

出征していくトモエ学園の小間使いの良ちゃんとの別れ、

小児まひの泰明ちゃんとの別れ、

トモエ学園との別れ。。。。

 

 

 

最後の方は、涙があふれて、あふれて、

オットが心配するぐらい、泣けて、

ティッシュ片手に鼻ズビズビで、読みました。

 

 

 

 

B29の飛行機から、焼夷弾は、いくつもいくつもトモエの、電車の校舎の上に落ちた。

校長先生の夢だった学校は、いま、炎に包まれていた。

先生がなによりも愛した子どもたちの笑い声や、歌声のかわりに、学校は、恐ろしい音をたてて、くずれていく。

もう、手のつけようもないくらい、その火は、学校を焼いた。

 

 

校長先生は、通りに立って、トモエの焼けるのを、じーっと見ていた。

いつものように、すこしヨレヨレの、でも、黒の三つぞろいだった。

上着のポケットに、両手をつっこんだ、いつもの形だった。

 

 

校長先生は、火を見ながら、そばに立っている息子の、大学生の巴さんに、いった。

 

 

「おい、今度は、どんな学校、作ろうか?」

 

 

巴さんは、びっくりして、小林先生の言葉を聞いた。

小林先生の子どもに対する愛情、教育に対する情熱は、学校を、いま包んでいる炎より、ずーっと大きかった。

 

 

 

 

~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

 

 

 

30年以上の時を経て、

誕生日に再会した『窓ぎわのトットちゃん』。

 

 

ぜひ、手に取って 読んでほしい一冊です。