まいど~メダカカブトムシカマキリとんぼもみじ

生きもの大好きドキドキ絵本講師の くが やよいですニコ

 

 

 

今日はこの絵本について書きます。

 

『つきよのばんのさよなら』

中川正文/さく

太田大八/え

福音館書店

 

1975年に発行された絵本で、今年で43歳になる絵本です。

 

 

月の絵本が数多く出版されている中で、

この絵本は忘れられない一冊です。

 

 

この絵本、古書店の本棚で見つけました。

「中川先生の絵本だ」、と手に取って読んでいると

あるページで、はっとしました。

 

 

「この絵本、、、読んでもらったことがある!」

 

 

庭で梅干を食べていた熊が振り返った形相が

子ども心に強烈に焼き付いていたのでした。

 

数十年を飛び越えて、その時の気持ちがよみがえってきました。

 

 

 

【お話は・・・】

 

夜、たろうが一人で留守番をしていると、表の戸を叩く音がします。

開けてみると、凍りつくような月の光の中に 親子の熊が立っていました。

「あ、おまえは!」

 

暑い夏の日に、たろうが庭で見かけたその熊は、調子が悪そうでした。

お腹が空いているのか、庭に干している梅干を貪るように食べていた熊は、

人間に追われていました。

 

たろうは、追いかけてきた大人に、その熊が去っていった方向と反対側を指さします。

 

「そうか、うちへきたのは、その(ときおなかにいた)こどもを

 わざわざみせにきよったのやなぁ」

 

そして、同じ月夜の晩に

湖へ漁に出かけていたたろうの父ちゃんは、

驚くような光景を目の当たりにします。

熊は、たろうに  さよならをしにやってきたのです。

 

 

 

 

最後のページの1ページ前、

たろうが囲炉裏の火をつつきながら固く心に誓うこと。。。

こんな場面(内面)を描いた絵本や児童文学が

今の世に どれだけあるだろう・・・

 

 

最後のページ、熊の子が

母熊のおっぱいに吸い付いている絵のあたたかさが

たろうの心情と重なって、とても とても愛おしい。

 

 

 

 

 

今日、10月13日は、

この絵本を書かれた中川正文先生の命日です。

 

 

中川先生は、NPO法人「絵本で子育て」センター主催の

「絵本講師・養成講座」の講師のおひとりでした。

私が絵本講師になるために受講して、

初めて聴いたのが 中川先生の講義でした。

その時に聞いたお話が、今も自分の絵本講座の基になっています。

 

「絵本という大切な心の文化を、子どもたちに「与える」なんていっちゃいけないよ。」

 

「高みから与えるのではなくて、平座(ひらざ)の関係で。」

 

 

・・・これは親子関係だけでなく、私が絵本講座をするときに心がけていることでもあります。

 

 

そして、小学校や中学校で『すみれ島』を読んでいると

病気をおして この絵本を読み聞かせてくださった

中川先生の声が聞こえてくるような気がします。

 

講義で読んでもらっている間中、涙が溢れて止まらなくて、

「・・・この絵本、読み継いでいこう。」 と思いました。

 

 

『すみれ島』

今西祐行/文

松永禎郎/絵

偕成社

 

 

「こういう絵本を通してでも、絵本講師は

戦争のことを伝えていく義務がある。」

 

 

 

中川先生はじめ講師の先生方の言葉が、今も

血となって私の中を流れていることを感じます。

 

 

そして、

伝え続けていきたい絵本、伝え続けていきたい想いが

私の胸にあふれています。

 

 

 

 

 

 

中川正文先生の作品。(これ以外にも数多く出版されています)

里山の風景が描かれた裏表紙もすてきです。

人は、自然の中で 暮らしていたんやなぁ。

 

 

『ねずみのおいしゃさま』は初版の画家さんじゃないけど。。。

 

 

 

『きつねやぶのまんけはん』の裏表紙。

 

 

 

中川先生の著書。

『絵本・わたしの旅立ち』

中川正文/著

NPO法人「絵本で子育て」センター

 

 

この本のことは、こちらに記事を書きました。

 

 

 

 

 

 

 

※記事中の絵本の書誌情報(いずれも中川正文/さく)

・『ごろはちだいみょうじん』梶山俊夫/え(福音館書店)

・『きつねのおはなはん』二俣英五郎/え(福音館書店)

・『ねずみのおいしゃさま』やまわきゆりこ/え(福音館書店)

・『きつねやぶのまんけはん』伊藤秀男/画(NPO法人「絵本で子育て」センター)

・『いちにちにへんとおるバス』梶山俊夫/絵(ひかりのくに)