まいど~さくら

生きもの自然科学大好き

絵本講師のくがやよいです。

 

 

(2018年4月9日の記事の再投稿です)

 

 

 

東京都 東村山市。

満開の桜を見に花見客が訪れるその場所は

かつてヒイラギの高い生垣で外界と遮断され、

自由に出入りすることができない場所でした。

 

 

 

 

その物語との出会いは、映画からでした。

 

河瀬直美 監督

『あん』

 

 

 

 

数年前、大阪の小さな映画館に

新宮晋さんの映画を見に行きました。

 

 

その時、『あん』の予告篇が流れて、

そのままぶっ続けで『あん』を見ました。

 

 

 

 

 

もう、涙が溢れて、溢れて、、、、

 

 

 

 

 

永瀬正敏さんと樹木希林さんの

キャスティングも素晴らしく、

BGMも相まって

見たあとはしばらく余韻が去りませんでした。

(中学生のワカナ役を樹木希林さんのお孫さんが演じています)

 

 

 

お話は・・・

 

 

桜の木の傍にある

小さなどら焼き店の店長、千太郎(永瀬正敏)。

 

ある日、一人の女性・徳江(樹木希林)が訪れ千太郎に

「これ、ちょっと食べてみて」

と 自分で作った つぶあんを渡します。

 

 

怪訝に思い、そのあんを一度は捨てるのですが、 

やっぱり気になって一口食べた千太郎は

その味に驚きます。

徳江は、素晴らしい あんを作る人でした。

 

 

そして千太郎は、徳江に

お店を手伝ってもらえないかと申し出るのですが・・・。

 

 

 

 

 

樹木希林演じる徳江さんは、

かつてハンセン病(らい)を患っていました。

 

 

患者は絶対隔離。

生涯、ヒイラギの囲いの外には出られず

女性は子どもができないように

不妊手術や中絶を強いられる

旧優生保護法が廃止されたのは

つい最近、

1996年のことでした。

 

 

 

 

 

鍋のそばで じっと小豆の声に耳を澄まし、

小豆と会話する徳江さん。

 

 

小豆や、桜や、

自然の中のものたちの声を聴く徳江さん。


 

哀しくもやさしく、「店長さん」に

様々なものを伝えていく徳江さん。

 

 

徳江さんが子どもを産めていたなら

ちょうど千太郎ぐらいの

年齢だったのかもしれません。

 

 

 

 

 

自分も、過去に過ちを犯し

社会復帰に苦しむ千太郎。

 

 

世の中の、どうしようもない偏見や差別にさらされ、

抗うこともできず、、、

 

 

千太郎は、そういうものから

徳江さんを

守りたかったのかもしれないな。。。

 

 

徳江が遺していった道具を見て

自分の中の何かを曲げることなく

貫き、

ふたたび立ち上がる千太郎。

 

 

 

ラストシーン、

満開の桜の木の下の「店長さん」の表情が

いいのです。

 

 

 

 

 

 

 

たくさんの人に見てほしい映画やなぁ、と

ワンコインで上映される日があったので

図書館ボランティア仲間にも薦めまくり、

娘と一緒に もう一度見に行きました。

 

 

当時、中学一年生だった娘は

映画が終わり、席を立つ瞬間に

 

「・・・いい映画やったね。」

 

とぽつり。

 

 

 

 

 

 

その後、小説の『あん』(ポプラ文庫)を買いました。

(こちらは、ハンセン病のことについて

より深く、詳しく書かれています。)

 

 

原作は、叫ぶ詩人の会のドリアン助川さん。

 

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旧優生保護法の記事は新聞でもよく見ます。

なぜ、そんな政策が

長年続いてしまったんやろう・・・

 

 

古い時代のせいにしないで

その歴史を知って、

誤解からうまれる偏見や差別を

なくすことはできないのかな・・・

 

 

 

河瀬監督と ドリアン助川さんが

伝えたかったことが

きっとそれぞれの胸に響くと思います。

 

 

 

 

 

映画『あん』と小説『あん』。

 

 

満開の桜を見ると

いつも思い出す本と映画です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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