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LB-292 チャカ・カーン

 ホイットニー・ヒューストンがカバーしたことで知られる曲も、ホイットニーのすばらしい歌唱力以上に、チャカ・カーンは飛ばしに飛ばしていく。まるで、レーサーのように、一秒以下の細かい部分で巧みにギアチェンジする。
 近年は、ジャズも含めてスタンダートを歌うようにもなっている。「SummerTime」を聞いていて、James Brownなどがそうであるように、表面的でなく、深い見えないところからくるパワーが音を自在に動かしていくことを思った。曲に対しての深い理解と共に、古さを感じさせず、先端に立つ。自分たちの血が背負ってきた歴史、そして現在に至るまでの自分自身、ひとつひとつの表現の背後に、計り知れない様々な事柄が存在している。聞けば聞くほどひとつひとつが応えてくる。そしてこれほどに強烈なテンションと自在な技巧、豊富で優れた色彩、表現感覚、イメージ力。たった一曲が莫大な時間を包み、人の心を掴む。



チャカ・カーン スーパーベスト



LB-291 尾崎豊

(NHKプレミアム10 ドキュメント)
 尾崎豊の19才の時のライブとリハの映像。はじめはアンコールの「I love you」から始まったため、彼をあまり知らない私は、すぐに彼の全体像をつかめなかったが、番組が進むにつれ、その音楽に圧倒された。歌の第一印象はストレートで、余計なものがついてない。次の「15の夜」でなんとなくスタイルが分かってくる。歌としては荒削りだが、それより言葉を叫ぶようにぶつけていくような歌い方、絶叫に近く、パフォーマンスも大げさだが、わざとらしくなく全体として伝わってくるものがあった。あまりこの歌い方で、本当に聴かせられる人は見たことがなかった。
 途中、彼が歌詞に書かれているような高校時代の苦しみについて語るMCは、なんだか格好つけてて、その時代を知らなかった私には上手く共感できなかった。でも、それがそのまま歌詞になっている歌声からは、嘘は感じられなかった。本当に感じていることを今自分の外に放出しているのだろうと思えた。絶叫に近い歌は重くもあるが、語られることから感じるものがあったので、聴き飽きなかった。そして、声の質が変わっても伝わってくる言葉の重みは変わらなかった。それでいて、彼は音楽を常につかんでいて、絶叫してても動き回ってても、流れは外さない。だから、一人の人間の吐露でおわらず、ノリが良くて体中で楽しめるライブとなっていた。


"LIVE CORE" IN TOKYO DOME [DVD]/尾崎豊

LB-290 荒井洸子

コンサート「永遠の絆」

 基礎のしっかりしたとても丁寧な歌で、生真面目な印象をうける。表現力もあって、歌手としては日本でトップクラスではないかと思う。特に3、5曲目等のコミカルでリズミカルな歌は、溌剌とした声質にとても合っていて、その総合的な実力の高さがよく伝わってくる。MCもTV番組の司会者並みに達者で、ステージとしての完成度が非常に高く、プロの仕事というものを感じさせられる。

復讐/ライブ・イン・ギンザ/荒井洸子

LB-289 マリア・カラス

「歌に生き、恋に生き(パリ・デビュー)」

 音楽面に関しては、「声に強さと透明感があって、フレージングはダイナミックかつ繊細」ぐらいにしか理解できていないが、歌い始める前に見せる表情、立振舞いだけで、その歌がどれほどの悲しみを表しているのか、全て伝わってくる。ステージで声を出し始めた時が歌の始まりというわけではなく、そのずっと前から始まっているのだということを教えてくれる。


歌に生き、恋に生き [DVD]/カラス(マリア)

LB-288 写真家 内藤忠行

{対談者:高橋周平(多摩美術大学助教授)}
・写真の瞬間性、シャッターチャンスはジャズから学んだもの。
・写真と音楽の共通性 ・目に見えないもの(音)を表現する可能性。
・写真は2次元だが、プレイヤー(たとえばマイルスの音)から自分が写真で表現したい濃度(空気感)が決まる。濃度を決めるのは、実際には適性露出をどのくらいにするかということになってくるのだが、そこに写真を撮る自分のフィルターがかかる。
・優れた芸術家のスピリチュアルを真似る。たとえば、ピカソやモネなど。形式だけを真似ない。
1.被写体をきちっと見極める目を養う。ストレートに撮る―その被写体の精神まで知る。
2.どこまで飛べるか、創造できるか。写真は技術と感覚のせめぎあい。



LB-287 ドナ・サマー

 ディスコサウンドの女王の一人、ドナ・サマー。華麗なヴォリュームある歌声は、現在も衰えず健康的で、熟年の魅力、表現も味も重ね、大きく客を包むような母性もプラスされ、存在の大きさ、陰ることのない太陽のようなパワーを感じる。1999年ライブでは、自作のミュージカルの曲も披露。歌で舞台で生きていく主人公が、ストレートに歌い、嘘くさくなく、余計なものを感じさせず、すっきりと気持ちがいい。一曲目より、二曲目、中間とどんどんパワーも声もでてきて、ディスコクイーンの底力の大きさを感じさせ、圧倒させる。年齢関係なく、不死身のよう靱な体力である。ヒット曲「she works hard for the money」などはむしろ当時のビデオクリップでみるよりも、声が太い。また、当時は勢いと自己主張の方が強い印象を残したが、今は、自分を通しながら、他者へ真っ直ぐに伝えるという表現のあり方の違いを感じる。
 黒人系歌手のベテランは特に、50代過ぎても、声に衰えがなく、むしろよりいい声になって、経験を重ねて、一層凄くなっていることが多く、彼らの体の強靱さを思う。”若い頃、最初は変な声で変な歌い方をしてたわ、だから祈りを続けたの”とインタビューで語っていたが、そんな頃があったとは全く想像できないほど、すっきりとした表情で、深く、ストレートでシンプルに心に届くすばらしい歌を歌う。


ドナ・サマー ライブ&モア・アンコール!

LB-286 ナンシー・ウィルソン

 デビューして間もない頃も、既にベテランのようなふるまいで、明るく、ダイナミックであり、一級のエンタテーナーである。一曲の歌の中で、強弱、フレージング、メリハリをたっぷり入れ、違和感なく表現が瞬時変化しながらも、大きく崩れることがない。これほど体を瞬間的にフルに使いわける機敏さ、反射神経のような感覚、能力は、日本語ではなかなかないだろう。そのパワフルな歌声、表現力が舞台を作っている。普段の生活、人間模様の面白さを切り取り、拡大し見せる技。生きていることが、人生が面白いと前向きな気持ちを与える。ユーモアなMCも魅力的でおかしく、歌へのもちこみ、歌との境がなく、自然に入ってくる。それがとても欧米人の文化であることも感じる。


名盤JAZZ25選~紙ジャケ2300 アイル・ビー・ア・ソング

LB-285 ポール・ニューマン

 (アクターズ・スタジオ・インタビュー)
 「演技について才能があるとは一度も思ったことがない。だがどうしてもやめられなかった。だから挑戦し続けた。」インタビューが始まってまもなく、ベテランは予想外な面をみせ、語り出す。ひたすら努力家。直感で動けるタイプではなかったと、粘り続け、あらゆる角度で物事を見て考え練習。自分は楽器であり、たくさんの要素が集まって音がでると話す。また自分のあったやりかたでなければ意味がないことも指摘する。
 「才能だけに頼っていては、いつのまにか堕落して、せっかくのその才能も浪費してしまう。限りなく上へ目指してとことんやる決意がなければいつか泣きをみるだろう」
 人は誰もが不完全であることに気づき、どう自らを育ててくか、才能に恵まれていたに関わらず多くの役者たちが一瞬で消えていく中で、地道に自らのやり方で、傑作、駄作の波を繰り返しながら、ベテランの境地まで上り詰めた。そこからでる確信にあふれたひとつひとつの言葉の重大さ。停滞することなど望まない、つねに自分に追い打ちをかけてすすみ続けていた。

ポール・ニューマン/スティング

LB-284 「男鹿和雄展」

 ジブリの背景画家の下書きから、完成までの作品を観れて勉強になった。とにかく絵の細部までこだわり抜いている感じがした。ジブリの絵に関しては他の制作者の意向に合わせているのだろうが、いかにリアルにするかを追求している感じだし、絵本などの軽い絵でもタッチは変わっても如何にこだわれるかについては妥協していないと感じた。そしてこの展示を観るだけでも、この人が24時間絵漬けな生活をしていることを思い知らされて反省した。もっと自分もやれる事がある。それにしても凄い人、これだけ多様な万民の心を一斉につかめるものをつくっている。ジブリは凄いのだと改めて感じた。


LB-283 森進一

 ちょうどアメリカのブルース歌手を聞いて感動した後で、たまたま森進一の「おふくろさん」を聞いたが、わずか1分15秒の芝居のような映像の中で、強烈な印象を残した。日本魂が全快にあふれている。その作品を刻みつける表現は、まさに人々が賞した絶唱である。歌が歌にならないほど、噛締め震わし、そこに何を訴えているのか、リアルな激情が聞き手の胸に飛び込んでいくる。昭和40年代後期、まだ若い姿に、ヴィジョンを鋭くもった個性の強さに度肝をぬかれた。また昭和59年紅白での「北の蛍」も感無量である。


ベストアルバム/森進一