あー、今夜は涼しいなー。エアコンなしで窓を少し開けてるだけ(雨降ってないし)で心地いい。(でも風がさすがに強くなってきた。。。)

 

さて、突然アートモードです。

 

夏はもともと苦手な上に、今年の異常な暑さのため、気になるダンス公演もいくつかあったんですけど気持ちが萎えてしまって行きませんでした。最近、コンテンポラリーダンスに対してはあまり食指が動かなくなっているというか、1時間以上そのパフォーマンスをみてもカタルシスを得られるとは限らないので、よほど自分がダンスに対して貪欲になっている時期じゃないと、この暑さでは足を運ぶ気にならないのです。


一方で、展示アートは気が楽なので、暑い中でも足を運んでいます。気に入らなければさっさと出ちゃえばいい。気に入ったらずっといればいい。

ということで今回は、7月から先週末にかけて行ってきたアート展のうち、イチオシのこちらをご紹介。

 

 

■「ゴードン・マッタ = クラーク展」
期間: 2018年6月19日(火)~9月17日(月・祝)月休
会場: 東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
住所: 東京都千代田区北の丸公園 3-1(東京メトロ東西線「竹橋駅」)
開館時間: 10:00?17:00(金・土曜は21:00まで)
観覧料: 一般1,200(900)円、大学生800(500)円

http://www.momat.go.jp/am/exhibition/gmc/

 

1970年代にニューヨークを中心に活躍し、35歳という若さでこの世を去ったアーティスト、ゴードン・マッタ=クラーク(1943-78)。本展は、わずか約10年という短い活動期間の中で、アート、建築、ストリートカルチャー、アーティストによる食堂「フード」の経営と、多彩な才能を発揮したマッタ=クラークの活動を、フルスケールで紹介するもの。
作品の多くが個人蔵、あるいはメトロポリタン美術館やポンピドゥー・センターなど欧米の著名美術館所蔵で、これまでアジアではまとまった形で紹介される機会が無かったマッタ=クラークのアジア初回顧展となる。
会場では、都市を舞台に活動したマッタ = クラークにとって重要だった、「住まい」「ストリート」「港」「市場」「ミュージアム」の5つの「場所」にフォーカスして作品を展示。また、1970年代ニューヨークの文化的・社会的背景を示す資料や、現在の東京に関わる資料などを展示に組み込むことで、現代の都市における、マッタ = クラーク作品の今日的な意味に迫る。

https://www.fashion-press.net/news/39134

 

 

わしはゴードン・マッタ=クラークというアーティストは名前も知らなかった。
ただ、情報ツイで流れていたこちらの写真に惹かれて、金曜日、会社の帰りに思いつきで行ってみただけだった。

 

 

 

展示されていたのは、彫刻・映像・写真・ドローイング・関連資料など、約200点。
上の写真は一軒家を縦真っ二つに切断した《スプリッティング》という作品を撮影したもの。これは、彼のアート活動の中でも、建物の一部を切り取る「ビルディング・カット」シリーズの一つで、他にもマンハッタン、ブロンクス、ブルックリン各所の建物の天井や床に四角い穴を開けた 《ブロンクス・フロアーズ》という作品の写真とか、《スプリッティング:四つの角》という実際の立体作品があって、かなりインパクトがあった。

取り壊し前の建物を切断し、見慣れた日常をまったく新たな空間・時間へと変容させる「ビルディング・カット」をはじめ、軽やかでクール、そしてポエティックな彼の活動は、没後40年となる今日もなお、世界中の注目を集めています

 

 

 

 

 

個人的に惹かれたのは、しかし、その「ビルディング・カット」シリーズではなく、「アナーキテクチャー」の分類で紹介された写真。これらは、彼自身がなにか手を加えた作品の写真ではない。仲間たちと立ち上げた「アナーキテクチャー」というプロジェクトにおいて、彼は「メタファーとしての空隙、隙間、余った空間や、放置されたまま活用されない空間」について考えていたといい、そのための素材としての写真。通信社による写真も多く含まれる。それらは、地面に倒した自転車とか、ゴミが散らばった路上の一角とか、海に沈没している船の帆先とか、普通は意味のない風景。これを見た時に、赤瀬川原平さんの「観察」シリーズを思い出しました。

 

 

 

 

マッタ=クラークが生きたのは、世界経済が爆発的成長を始める1970年代、そしてニューヨークという資本主義の実験場でした。そこで行われた彼の活動の核心とは、豊かなコミュニティーの創出にアートが寄与する方法の模索にありました。

 

彼のワークは、作品として残っているものが多くあるわけではなく、その場限りのイベント的要素が多く、展示されている内容の多くは映像や写真だ。それにも関わらず、わしは今回の展覧会をワクワクして見ることができたし、彼の「アナーキテクチャー」発想から、インパクトのあるビルディング・カット、「FOOD」レストランというソーシャルアート的活動といった、一括りにはできない独特なアート活動についてほんの一片ではあるが、なんとなく理解することができた。もちろん、その背景となる思想とか社会といったものにまで、まだ理解を深められたわけではない。


ただ、通り一遍の観察ではあるが、彼の作品からは、一見、破壊、切断、不在、隙間、欠如、空虚といったイメージが思い浮かぶにも関わらず、それらがすべて、「都市という人間の営み」につながっているため、彼の作品を見続けているうちに、最終的には「都市論」とか、「建築とは」にまで考えが及ぶのである。
実際、彼のアートは建築家に影響を及ぼしているらしく、建築家レム・コールハースも彼の作品に魅了された一人のようだ。(詳しくは、下記記述を参照)
http://kenjiido.com/gordon-matta-clark/gordon-matta-clark-%E3%83%A1%E3%83%A223

 

ゴードン・マッタ=クラークが、都市を構成する建築や空間に目を向けていたことが、わし的には自分の興味と当たらずとも遠からずな感じを受けた。そして、彼の作品を鑑賞することで、建築とかランドスケープなどを見る目が多角的になるというか、補強される感じがした。今はまだぼんやりとしてうまく説明できないが。

 

 

 

そしてもう一つ重要なことは、今回の展示手法が際立っていたという点。同展覧会を見て、アートのキュレーションて、こういうことじゃね?と思った。これが、どんなに新しい美術館だろうと、ありきたりの展示手法だったら、ゴードン・マッタ=クラークのアートを理解できずに会場を後にしていたかもしれない。
アートをどのように展示するか。下の記事によると、本展を企画したのは学芸員の三輪健仁という方で、展示デザインは、小林恵吾さん(NoRA)+早稲田大学建築学科小林恵吾研究室/上村遥さんが担当。彼らは公園のような展示空間を作成し、見事にゴードン・マッタ=クラークのアートの魅力を提示してみせた。

https://www.axismag.jp/posts/2018/07/96540.html

 

会場は「 Playground(公園)」というコンセプトで構成された。遊具や舞台装置のような要素が配された展示空間は、ゆるやかにゾーニングが施されている。明確な動線を設けるのではなく、来場者は公園の中のように自由にさまようことができる。

 

 

 

 

 

正直、70年代のニューヨークのアートシーンに興味なくても、建築に興味なくても、アートに関わる人、特に美術館関係者には見て欲しい。わしは何度もこの東京国立近代美術館に来ているが、これが同じ美術館だろうかと思うぐらい、空間のつくり方が独特だった。
最初の方では小部屋が続き、そのあとインパクトの強いビルディング・カットの作品を見せ、そこから更に広い空間へと続き、やがて鑑賞者は思い思いのコーナーで寛ぎながら作品(主に映像だが)を堪能することができる。ほんま、ここでコーヒー出してもええんちゃう?と思ったぐらい、寛げるし、アートを純粋に楽しめる。そして「飽きない」。これ大切。ていうか、「飽きない」工夫というのは、アートだけでなくて、ダンスにしろエンタテインメントにしろ、人が鑑賞するものについては必要最低限必須事項だと思う。

展示内容が充実していたことも大きいが、この斬新な空間のつくり方があったからこそ、何の前知識がなくとも、来てよかったと満足することができたのと思う。

 

 

 

 

手裏剣

 

NEW 今回の展覧会は、金・土は夜9時までやっていて、夕方行くのがオススメ。美術館前にカフェ屋台が出てて、お酒とかおつまみとかお庭でゆっくりいただくことができます。

 

 


>>同展覧会では、下記のような一般参加イベントもやっていて、誰でも期間中参加できる。GMC=ゴードン・マッタ=クラーク的風景を写真に収めてそれを送るというもの。アナーキテクチャーという考え方で、日常風景の何気ないもの、どうでもいいもの、打ち捨てられた空間、それらを写真で拾ってみようという意図だと思われる。
会場でもすでに応募されてきた写真のカラープリントが多く展示されていた。

ゴードン・マッタ=クラーク展Instagramイベント
「みつけよう!あなたのまちのGMC」
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/gmc/#section1-3


>>同展覧会を扱った記事の中で一番丁寧だったのはこちら。


◎美術手帖: アジア初。東近美「ゴードン・マッタ=クラーク展」で見るマッタ=クラーク35年の生涯
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/16830

◎美術手帖:ゴードン・マッタ=クラークが揺さぶり続けるもの。藪前知子が見た、「ゴードン・マッタ=クラーク展」
https://bijutsutecho.com/magazine/review/18042

 

>>同展覧会とは一切関係ないが、あるアート空間から都市論をめぐる考察で、ゴードン・マッタ=クラークやコールハースについても触れていて、とても面白い記事がこちら。書かれたのは偶然にも同展覧会の会場である東京国立近代美術館の主任研究員の方です。
http://10plus1.jp/monthly/2017/11/pickup-01.php


>>個人ブログ感想で一番共感したのがこちら。

A'holic>ゴードン・マッタ=クラーク展 @ 東京国立近代美術館
http://aholicdays.blog118.fc2.com/blog-entry-888.html

 

>>同展覧会の様子を撮影した映像がこちら。

東京国立近代美術館 ゴードン・マッタ=クラーク展
https://youtu.be/6Z2bz-Mnkkc


>>その他ゴードン・マッタ=クラーク(Gordon Matta-Clark)情報

http://images.google.co.jp/images?hl=ja&ie=UTF-8&q=Gordon+Matta-Clark&lr=&oe=Shift_JIS&um=1&sa=N&tab=wi

http://en.wikipedia.org/wiki/Gordon_Matta-Clark

 YouTube(Gordon Matta-Clark)
http://jp.youtube.com/results?search_query=Gordon+Matta-Clark&search=%E6%A4%9C%E7%B4%A2

 

 

手裏剣  手裏剣  手裏剣

 

偶然にも、今東京では建築・庭関連の展覧会が複数同時開催されている。
実はすでに最初の一つは行ったのだが、残りを見てまとめてレポ書くかもしれない。あくまで予定。


■「建築」への眼差し ―現代写真と建築の位相―
会期:2018年8月4日(土)~10月8日(月・祝)月休
会場:東京都 天王洲アイル 建築倉庫ミュージアム
時間:11:00~19:00(最終入館は18:00まで)
https://archi-depot.com/exhibition/a-gaze-into-architecture

 

■建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの
会期:2018年4月25日~9月17日
会場:森美術館 (六本木ヒルズ森タワー53F)
時間:10:00~22:00 (火~17:00) 無休
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/japaninarchitecture/index.html

 

■イサム・ノグチ ―彫刻から身体・庭へ―
会期:2018年7月14日(土)~9月24日(月・振休)
会場:東京都 初台 東京オペラシティアートギャラリー
時間:11:00~19:00(金、土曜20:00まで)月休
http://www.operacity.jp/ag/exh211/

 


建築とは関係ないけど、行ってまあまあよかった写真展。でも一つは今週金曜日まで。

 

■奈良美智 「Sixteen springs and sixteen summers gone—Take your time, it won’t be long now」
会期: 2018年7月7日(土) – 8月10日(金)日・月・祝休
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
時間:11:00〜19:00
http://www.takaishiigallery.com/jp/archives/18518/


■杉浦邦恵 うつくしい実験 ニューヨークとの50年
会期:2018年7月24日~9月24日
会場:東京都写真美術館 (恵比寿ガーデンプレイス内) 
時間:10:00~18:00 (木金〜20:00)月休
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3054.html

 

 

竹橋駅から国立近代美術館へ。