お久しぶりです。

 

かなだいFDの予想とか、今日から始まったBEYONDとか、一部スケオタ界隈の話題とはまったく逆行するのですが、8月に行ったフレンズ・オン・アイス2022(https://www.friendsonice.com/)のあとに途中まで書いた記事があって、せっかくなので最後まで書いてアップします。

まず、今回のショーの感想を簡単に。


現役選手は宇野昌磨君とかなだい、あとはチャレンジ枠の大島君とキッズ枠のスケーターだけ、他はプロのスケーターばかりという大人のアイスショーは本当に心地よいものだと、ひさびさのフレンズで実感しました。大きなホールで大きな集客を狙ったショーではないので、有名なゲストミュージシャンだとか、派手な演出もなく、ただただスケートを見せるアイスショー。
毎回、高橋大輔を見たくて複数回足を運ぶわけですが、今回は特に、ステファン・ランビエール、ジェイソン・ブラウン、ジェレミー・アボットという、わし得なメンバーが揃っていて、幸せな三日間でした。このメンバーが揃うなど、めったにない。特に、現役を引退して久しいジェレミーを招聘するのはフレンズぐらいなので、そこにジェイソンがインすることも珍しく、ステファンがまだバリバリのプロとして演技してくれてるから実現した、本当に貴重な、本当に貴重な(二回も言いたくなる)ショーでした。
私の一押しが高橋大輔であることに変わりはないけれど、その演技にかつて心から魅了されたという意味では、この三人のスケートもまた、唯一無二なのです。

楽公演は生放送で見ることができ、録画したかなだいの今季リズムダンスと合わせて、彼らの演技を何度もリピしています。

ちなみに、ブログから遠ざかっているせいで、いつもやるような演目リストを作る根気がありません。というわけで、振り返り用に、ちゃっかり他の方のブログのリンクだけお借りしておきます。

演目レポはこちら。

種子島ぴーさんのブログ
https://www.tanegashimapi.com/entry/2022/08/30/163339

あと、写真や関連記事はこちらね。

yocoさんのブログ
https://ameblo.jp/chocolove37/entry-12760784279.html
https://ameblo.jp/chocolove37/entry-12760963210.html
https://ameblo.jp/chocolove37/entry-12761172339.html
https://ameblo.jp/chocolove37/entry-12761314177.html
https://ameblo.jp/chocolove37/entry-12761491522.html

テレビ放送は明日と10月に放送予定があるので、楽しみです。

■地上波・日本テレビ「フレンズオンアイス2022」(関東のみ?)
9月11日(日)15:55~16:55

■CS放送・日テレプラス「荒川静香フレンズオンアイス2022 完全版」
https://www.nitteleplus.com/program/friendsonice_2022/
10月30日(日)18:00~[完全版]
 

 

手裏剣    手裏剣    手裏剣

 


そしてここからが本題です。

 

今日書いておきたかったのは、今回のショーで使用された、あるプログラム曲について。
自分の勘違いに気づくことができたので、いろいろわかったことを書き残しておきたい。

ステファンのプログラム曲を最初耳にしたとき、知ってる曲だと気づきました。
彼の今季ショープログラムの「This Bitter Earth」はファンタジーオンアイスでも披露されたらしいのですが、テレビ放送も全く見ていなかったので、金曜夜のフレンズオンアイスで見たのが初めてでした。
プログラムはもちろん素晴らしかったのですが、この楽曲を聞いたとき、「あれ、ヨハン・ヨハンソンでは?」と思ったのです。では?と自信が持てなかったのは、ステファンが使用した「This Bitter Earth」は女性の英語ボーカルがリミックスされたものだったのですが、私が知っている曲はインストゥルメンタルだったからです。

ヨハン・ヨハンソンだと思ったのは、去年の9月にブログにあげた記事「『最後にして最初の人類』ヨハン・ヨハンソン/スポメニック」で触れたとおり、映画「メッセージ(原題Arrival)」で使用されたこちらの曲を知っていたから。

https://youtu.be/YrwRd_27fhw

ところがですね。
今回のことをきっかけにいろいろ調べたら、これ、ヨハン・ヨハンソンではなく、マックス・リヒターの楽曲「On the Nature of Daylight」と判明したのです!今の今まで、ずっとヨハン・ヨハンソンだと思い込んでいた。。。恥ず。。
どういうことかといいますと、映画のサウンドトラック「Arrival」はたしかにMusic by Johann Johannsson となっているのですが(しかもCD持ってる)、その中に実際この楽曲は収録されていないのです。このアルバム聞いた時点で入ってないことに気付けよ、ですけど、CDで聴くときは、何かしながら聞くことが多く、気がつかなかったんですね。YouTubeで音楽聞く悪い癖で、聞きたい曲があるときは、ネットサーフィンしながらYouTubeでばっかり聞いてたので映画「メッセージ」で使われた曲=ヨハン・ヨハンソンの曲、ぐらいにしか思ってなかったのです。

この映画の音楽については、こちらの記事をちょっと紹介します。
 

■映画『メッセージ』にマックス・リヒターの「On the Nature of Daylight」が使われた理由とは
....実は『メッセージ』はもうひとつ番狂わせを引き起こしている。音楽が話題を呼びながら、ベスト・オリジナル・スコア賞の候補から除外されたのだ。理由はヨハン・ヨハンソンによるスコア以上に、オープニングとクロージングで流れるマックス・リヒターの既存曲「On the Nature of Daylight」が映画全体のトーンを決定づけているから。ヨハンソンも、ヴィルヌーヴが仮に入れていたリヒターの楽曲を超えるものは作れないと判断し、そのまま使うよう進言したという。

 

つまり、全体の映画音楽を書き下ろしたのは確かにヨハン・ヨハンソンなんですが、音楽が出来上がる前に仮で入れていたリヒターの楽曲があまりにも素晴らしく、オープニングとクロージングだけはそのまま実際の映画でも使用された、というわけ。


まあ、上の音楽動画の説明よく見ると、 "On the Nature of Daylight" by Max Richter と書いてあって、音楽情報もきちんと明記されてますがな。それに全く気付かず。
しかも、自分のブログでも、「ちょっとこの曲だけ聞くと同じアイスランドのオーラブルの楽曲に近いものがありますが、ヨハン・ヨハンソンぽいなと思うのは、むしろこっちだったりもします。」と、彼が本当に同映画のっために作曲した楽曲動画を紹介してて、つまり、無意識に「On the Nature of Daylight」はヨハン・ヨハンソンぽくないと自分でも思ってるんですよね。伊達に現代音楽聞いてきたわけじゃありませんよ。聞き比べる耳は持ってたわけですが(という割には、マックス・リヒターじゃなく、オーラブルっぽいとか言ってましたが。いや、確かにオーラブルっぽくもあるのですよ)、思い込みの前には役に立たなかったのです。
マックス・リヒターの楽曲はいろんなダンスや映画で重宝されていて、よく耳にする作曲家ではあったのですが、CDを買うほどにはハマっておらず、ああ、これはリヒターだ、とか言うほど曲を聞き分ける耳は持っていなかったのです。

 

それがこちらですね。はい、間違いなくマックス・リヒターです。

★Max Richter - On the Nature of Daylight

 


★Max Richter - On The Nature Of Daylight (Entropy)

 


(マックス・リヒター「On the Nature of Daylight」については、久石譲ファンサイトのこちらのブログが分かりいやすいです。久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 )

と、ここまでの話は、あくまでマックス・リヒターのインストゥルメンタル曲「On the Nature of Daylight」についての話。
 

手裏剣 

  


では、女性ボーカルがリミックスされた「This Bitter Earth」は誰がいつ作ったの?

ステファンが使用したのは、リヒターの「On the Nature of Daylight」に女性ボーカルがリミックスされた「This Bitter Earth」という曲。

「ディス・ビター・アース」Wikiによると、

「ディス・ビター・アース」(This Bitter Earth) は、1960年に、有名なリズム・アンド・ブルース歌手ダイナ・ワシントンの歌唱によって有名になった楽曲。この曲を書き、制作にあたったのはクライド・オーティスであった。

 

「ダイナ・ワシントン」とは、Wikiによると、1924年生まれで、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンと同じ時代に活躍し、1963年に亡くなられた著名なブルースシンガー。
 

そのオリジナルの「This Bitter Earth」がこちら。

This Bitter Earth (Original)
https://youtu.be/WxVw_q3x6UQ

では、マックス・リヒターが、自曲の「On the Nature of Daylight」にダイナ・ワシントンの「This Bitter Earth」をリミックスしたのか?

たしかに、マックス・リヒターのアルバムの中に、このリミックス・バージョンの「This Bitter Earth」を収録したアルバムがあります。それは、2018年に15周年記念盤として出された『The Blue Notebooks-15 Years』です。そのリリースニュースがこちらです。


■NEW RELEASESマックス・リヒターのソロ2作目『The Blue Notebooks』15周年記念盤がリリース決定

 

これは、2004年のオリジナル盤『The Blue Notebooks』の11曲に、さらにボーナストラックとリミックス曲7曲を加えた二枚組アルバムです。
この『The Blue Notebooks』に収録された「his Bitter Earth / On The Nature Of Daylight」がこちらです。

★This Bitter Earth / On The Nature Of Daylight

 


ところがです。

2018年よりもずっと前、2010年に実はある映画のサウンドトラックに、このリミックス曲「This Bitter Earth」が収録されているのです。
それがディカプリオ主演、マーティン・スコセッシ監督の映画『シャッター アイランド』
この映画では、リヒターの「On the Nature of Daylight」と、リミックス版の「This Bitter Earth / On The Nature Of Daylight」の両方が使用されている。(サウンド・トラックの楽曲リストはこちら

この映画のエンディングからクレジットで使用された曲として、この動画の1:36あたりから登場します。

★Shutter Island (Ending / Credits Music) This Bitter Earth.

 


つまり、このリミックス曲が最初に登場したのは、マーティン・スコセッシ監督の映画『シャッター・アイランド』であり、リヒターが自身のアルバムに収録するずっと前なのです。
では、リヒターがこの映画のためにリミックス版を制作し、提供したのだろうか?

日本語の記事ではその辺の経緯を書いたものが見つからなかったので、英語で検索してみたら、こちらの記事が見つかりました。(適当に日本語に訳してみました。)

 

■Dinah Washington & Max Richter: This bitter earth/ On the nature of daylight
 

The soundtrack consists of several pop songs from the 1950s combined with contemporary classical pieces from composers like György Ligeti, John Cage, Alfred Schnittke or Brian Eno and Max Richter. Dinah Washington’s “This bitter earth” was originally released in 1960 while “On the nature of daylight”, a minimalist piece by post-classical composer Max Richter (b. 1966) first appeared in The Blue Notebooks (2004).
The latter appears twice in Shutter Island: once in its original version and then remixed with “This Bitter Earth”‘s vocal track.  Working from distinct musical eras and styles, Robbie Robertson’s remix impressively manages to generate something entirely new. A haunting and flawless creation.


サウンドトラックには、いくつかの50年代ポップ・ソングと、ゲルギー・リゲティ、ジョン・ケージ、アルフレート・シュニトケからブライアン・イーノ、マックス・リヒターといった現代音楽家の音楽が組み合わされている。ダイナ・ワシントンの「This bitter earth」は、原曲は1960年にリリースされており、一方、ミニマル音楽である「On The Nature Of Daylight」は、ポスト・クラシカル作曲家のマックス・リヒターの2004年発表アルバム『The Blue Notebooks』で最初に収録された。
「On The Nature Of Daylight」は『シャッター アイランド』本編で2回使用されている。オリジナル・バージョンが先に流れ、その後に「This bitter earth」のボーカルトラックとのリミックス・バージョンが流れる。音楽的に異なった時代性とスタイルを組み合わせたロビー・ロバートソンによるリミックス版は、印象的な手法で、全く新しい何かを生み出している。心に深く残る完璧な作品となった。

 

■'Shutter Island' soundtrack casts eerie spell

The Martin Scorsese thriller “Shutter Island” comes with a thrilling soundtrack. Instead of commissioning an original score, Scorsese turned to old buddy Robbie Robertson, songwriter-guitarist of the Band. Scorsese directed the “The Last Waltz,” the film of the Band’s 1976 farewell concert, and after sharing bachelor-pad digs with Robertson, the director had him supervise the music for most of his movies from “Raging Bull” to “The Departed.”
 

マーチン・スコセッシ監督のスリラー作品『シャッター アイランド』のサウンドトラックもまたスリリングだ。映画のオリジナル楽曲を作る代わりに、スコセッシは古くからの友人で、元ザ・バンドの作曲家兼ギタリストであるロビー・ロバートソンに声をかけた。スコセッシは、1976年に行われたザ・バンドの最後の解散コンサート映画『The Last Waltz』を監督し、その後ロバートソンと交流を深め、「レイジング・ブル」や「ディパーテッド」など、自身の映画の多くでロバートソンを音楽監督として起用している。

 

つまり、最初にリミックスしたのは、リヒターではなく、ロビー・ロバートソンなのだ。
『シャッター アイランド』のサウンドトラックは、オリジナル楽曲で構成されたものではなく、ロビー・ロバートソンがクラッシック曲から現代音楽、そして50年代ポップソングなど、既存の曲を採用したものだった。
この映画のために、彼がリミックスした「This bitter earth」こそが、最初のバージョンだったのです。

『シャッター アイランド』のサウンドトラックCDの販売サイトのコメント欄には、一般の方からのこういう書き込みも見つけた。

音楽は日本wikiではザ・バンドのロビー・ロバートソンとなっているのは正確ではない。オリジナル楽曲はなく、本作の音楽はすべて既成曲。ロビーが(おそらくスコセッシと共同で)選曲し、ロビーが一部のリミックス(「This Bitter Earth」(D・ワシントン歌)と「On the Nature of Daylight」(Max Richter)など)を担当。島上陸シーンなどに流れる「Symphony No. 3:Passacaglia – Allegro Moderato」(Krzysztof Penderecki)など、本作のためにあるのかと思わされるほどマッチしていて驚く。選曲のセンスの素晴らしさ。

 

こういうのを読んだら、『シャッター アイランド』見たくなったわ。
スコセッシとかディカプリオとか目当てじゃなく、「This bitter earth」目当てで映画見るのもなかなかやで。

ロビー・ロバートソンについてのWikiはこちら。

『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』(2020年)
https://youtu.be/UKa_n87g5JM
1976年11月25日、サンフランシスコ、ウィンターランド・ボールルーム。激動の70年代後半に、一つのバンドがその活動に終止符を打った。彼らの名は「ザ・バンド」。ボブ・ディランをはじめ音楽史に偉大な足跡を残したミュージシャンたちから尊敬されるロック史上、最も重要なバンドの一つである。本作はギターのロビー・ロバートソンが2016年に綴った自伝を元に、バンドの誕生からボブ・ディランとの出会い、彼のバックバンドとして回ったツアー、ウッドストックの“ビッグ・ピンク”でのレコーディングの日々の中で生まれた美しい兄弟の絆、その後に訪れる乗り越えがたい軋轢、そして伝説的解散ライブ「ラスト・ワルツ」まで――才能、幸運、苦悩、狂気が横溢する創造の旅路を追ったドキュメンタリー。


手裏剣

 

 

それでは、ステファン・ランビエールが自身のパフォーマンスで使用したバージョンはそのどちらかなのでしょうか?

実は、ロビー・ロバートソンによる2010年『シャッター アイランド』バージョン、リヒターによる2018年『The Blue Notebooks-15 Years』バージョンだけでなく、ダニエル・ホープというイギリス人ヴァイオリニストが2020年に制作したアルバム『ホープ@ホーム』に収録したバージョンもあり、おそらくステファンが使用しているのはこのダニエル・ホープバージョンのようです。
それがこちら。

★Richter: This Bitter Earth / On the Nature of Daylight

 


上の二つとの違いはわかりますか?
まず、ピアノが使われていることです。最初の1音から、ダニエル版にはポロンというピアノの音が重なっています。先の二つのバージョンでは、複数の弦楽器が伴奏していますが、ダニエル版は、彼が弾くバイオリンとピアノだけです。
さらに、ボーカル部分をジョイ・デナラーニが新たに歌っている。なので、ダイナ・ワシントンのボーカルをリミックスした最初の二つとは音源そのものが違うのです。


明日(つか今日)の日テレの放送ではステファンの演技は流れないと思いますが、生放送を録画された方は再度、ステファンの演技部分を見て、確認してみてください。

フレンズ・オン・アイスでステファンの演技を見て、己の勘違いに気づいた、というお話でした。


ちゃんちゃん。