桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』を読んだ。『少女七竃と七人の可愛そうな大人』も感心したが、著者に対しては何となく、ライトノベル、ジュブナイル、エンタメ系の作家とのイメージが濃く、いまいち乗り切れてない自分がいた。しかし、とあるインタビューで車谷長吉を愛読していることや、新潮の『波』1月号で西村賢太の『暗渠の宿』の書評を寄せていることもあり、早速、新刊購入し、読んでみた。タイトルも何か車谷の『赤目四十八瀧心中未遂』っぽいところも高感度高い。
で、秀作である。赤朽葉家という山陰地方の旧家を舞台にした3代に及ぶ女の叙事詩だ。たたら場から高炉まで製鉄業を生業とする家の物語は、山陰地方の神話を織り交ぜて、斜陽化してゆく製鉄業と家を巡る女たちの物語が、やや古風に意図されたが、堅苦しくはなくリズミカルな文体で描かれる。「山の人」(作中ではサンカという設定)が町に置いていった「万葉」という少女が赤朽葉家の嫁となり、家を守ることに奮闘しながらも、思い出したかのように山を訪ねそこで見た、鉄砲薔薇の美しさを描く場面は秀逸である。ジャンルを超え活躍する著者の文芸作品としては転機になる予感のする一篇である。
- 桜庭 一樹
- 赤朽葉家の伝説









