男と女 人生最良の日々(クロード・ルルーシュ監督作品) | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

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ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

監督・脚本 クロード・ルルーシュ

脚本 ヴァレリー・ペラン

撮影 ロベール・アラズラキ

編集 ステファヌ・マザレグ

音楽 フランシス・レイ、カロジェロ

出演  アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、アントワーヌ・シレ

     マリアンヌ・ドニクール、スアド・アミドゥ、モニカ・ベルッチ

2019年度 製作国 フランス 上映時間 1時間30分

 

クロード・ルルーシュの出世作「男と女」(1966年)は、20年後に続編が作られましたが、

更に30年後にオリジナルメンバーで新作が作られると知ったときは、

主演のアヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャンは80歳を優に超えていたので、
あの瑞々しい世界観を汚されるのではないかと懐疑的になり、公開後も暫く観るのを

躊躇ていました。

観る切っ掛けになったのは、原題のLes plus belles années d'uneの意味が、

ヴィクトルユーゴーの言葉「人生最良の日々を、まだ生きていない」であることを

知ったからですが、ロマンティックな「男と女」の名場面に老いた二人の姿を重ね合わせると、

自分自身の人生とオーバーラップしてしまい、どうしても感傷的な気分から抜け出すことが

出来ず、私には本作によるアンチエイジングの効果はありませんでした。

半世紀にも亘る壮大なラブストーリーとして完結した本作に欠けている点は、

リチャード・リンレクター監督で、イーサン・ホークとジュリー・デルビーが同じ役を演じて

いる「ビフォアシリーズ」【「ビフォア・サンライズ」(1995年)「ビフォア・サンセット」(2004年)「ビフォア・ミッドナイト」(2013年)】のように、主人公の今を描けていない

ことです。

そのために、年齢に応じた愛の形と時代性を見せることが出来ずに、ただのファンタジーに

終わってしまっていることで、“人生最良の日々を、まだ生きていない”を描くには、

主人公は余りにも寡黙すぎて、監督の意図した今を生きる意味が伝わってこないのは、

映像派監督の弱点と言えるのでしょう。

最後に、憧れの女性だったアヌーク・エーメに一言。

“初恋は、遠くにありて思ふもの”

 

 

  

     「男と女」(1966年)       「男と女Ⅱ」(1986年)