ペイン・アンド・グローリー(ペドロ・アルモドバル監督作品) | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

 

監督・脚本 ペドロ・アルモドバル

撮影 ホセ・ルイス・アルカイネ

編集 テレサ・フォント

音楽 アルベルト・イグレシアス

出演 アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、アシエル・エチェアンディア

    レオナルド・スバラグリア、ノラ・ナバス、セシリア・ロス

2019年度 製作国 スペイン 上映時間 1時間53分

 

70歳代の老境の域に達したアルモドバル監督が、

今の心境を等身大の主人公に託した、

痛みからの解放と再生を描いたヒューマンドラマ。 

映画監督の主人公は、数々の病を抱えて満身創痍の状態で、

生きる意味を失いかけていましたが、

過去に名声を博した作品の再上映を切っ掛けに自分と向き合うことになり、

時の歳月の中で失ってしまった愛の欠片を、記憶の中で拾い集めることで、

活力を取り戻していきます。

アルモドバルは「欲望の法則」「バッド・エデュケーション」と本作を、

“欲望と映画“を題材にした3部作と位置付けていて、

完成するまでに32年を要したと語っているように、

本作で再上映された作品は「欲望の法則」と言うことになります。

ゲイの恋人や彼の作品に関わった役者たちは度々描かれてきましたが、

本作では、劇中の台詞にあるように、

今まで描いてこなかった母親をストレートに描いている点で、

彼の今までの作風とは相反する道徳的な、

すべての痛みから解放してくれる胎内回帰の作品と言えるでしょう。