ブラック・クランズマン(スパイク・リー監督作品) | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

監督・脚本 スパイク・リー

原作 ロン・ストールワース

脚本 デヴィッド・ラビノウィッツ、ケヴィン・ウィルモット、チャーリー・ワクテル

音楽 テレンス・ブランチャード

撮影 チェイス・アーヴィン

編集 バリー・アレクサンダー・ブラウン

出演 ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラー・ハリア

2018年度 生産国 アメリカ 上映時間 2時間8分

 

タイトルのクランズマンは、白人至上主義の秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)の団員の事で、

アメリカのコロラドスプリングス警察が初めて採用した黒人ロン・ストールワースが、

同僚の白人刑事の体を借りて、二人一役(デュボイスの二重意識。アメリカ人である事と黒人の

葛藤する二つの理想を表現)で、KKKの悪事を暴くため、団員に成りすまして潜入捜査した実話を

基に、社会派の黒人監督スパイク・リーが映画化した作品です。

 

 

スパイク・リーが過去に作った「ドゥ・ザ・ライト・シング」「マルコムX」等の人種差別を扱った作品と

趣が違うのは、原作の映画化権を持っていたのが、「ゲットアウト」「アス」と話題作を連発している

黒人のコメディアンで映画監督のジョーダン・ピールだったので、シリアスさを抑えた娯楽性の高い

コメディーに仕上がっていて、また第1次世界大戦以降に白人伝道師ウィリアム・ジョセフ・シモンズ

により復活したKKKは、初期の黒人差別に加えて有色人種や宗教も攻撃対象にしていたので、

主人公の手足になる白人刑事を、原作とは違うユダヤ人にすることで、サスペンス度をアップさせる

事にも成功しています。

時代背景が1970年代なので、当時流行した黒人のヒーロー、ヒロインが活躍したブラックスプロイ

テーション映画(「クレオパトラジョーンズ」「黒いジャガー」「スーパーフライ」等)の雰囲気を

意識的に醸し出していますが、黒人女性活動家に「近頃の黒人映画はファンタジーばかりでコフィー

(タランティーノの「ジャッキー・ブラウン」の主役にもなったパム・クリアが演じたヒロイン)なんて

この世には存在しないし、現実は映画とは逆にピッグ(警官)が黒人を殺してる」と皮肉を言わせたり、

革新的な映画技法でエイゼンシュタインにも影響を与えたとして評価されている一方で、黒人を

悪役にクランズマンを英雄として描いている人種差別映画として名を馳せる「国民の創生」を、

パーティ会場で上映して歓声を上げているKKKの醜態を見せる事も忘れていません、

その一方で、戦闘的な黒人解放闘争を展開するブラックパンサー党をKKKと同列に扱ったり、

スピルバーグのナチスを扱ったプロバガンダ映画の様に、感情に訴求しなかったことに好感が

持てましたが、やはり徒では済まない猛者のスパイク・リーは、本編終了後に、トランプ大統領の

アメリカン・ファーストで息を吹き返した白人至上主義の活動(※ユナイト・ザ・ライト・ラリーの

ドキュメンタリーフィルム)を挿入する事で、現在進行形の問題としてクローズアップしています。


 

※2017年8月11、12日にバージニア州シャーロッツビル奴隷解放公園に設置されている南北戦争の

南軍の英雄リー将軍の銅像撤去に反対する極右集会で、集会反対派との間で衝突が起こり、

集会反対派の集団に車が突入して、白人女性のヘザー・へイヤーさんが死亡しました。