レヴェナント 蘇えりし者 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

監督・脚本 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本 マーク・L・スミス
原作 マイケル・パンク
撮影 エマニュエル・ルベツキ
編集 スティーヴン・ミリオン
音楽 坂本龍一、アルヴァ・ノト
出演 レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、
    ウィル・ポールター
2015年 アメリカ

西部開拓時代のアメリカで、毛皮貿易の探検隊に参加していた猟師ヒュー・グラスが、
旅の途中でハイイログマに襲われて瀕死の重傷を負い、介護していた仲間の裏切りで
山奥に見捨てられますが、フォート・カイオワまでの320キロの距離を、自力で生還したと
いう実話は、その後語り継がれて、多くの書籍や劇の題材として取り上げられてきました。
本作は、その中の一つである、マイケル・パンクの小説「レヴェナント(蘇った亡霊):
ある復讐の物語」を、「バベル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが映画化した
サバイバル映画です。
新天地を開拓して行くと言う、アメリカン・フロンティアの日の当たる部分しか描かれて
いなかった、ジョン・ウェインが活躍していた時代の映画と違って、西洋人と先住民が
交戦する最前線と言う、もうひとつの意味合いを持つフロンティアの側面を、本作はリアルに
描いていて、オープニングの戦闘場面は凄惨を極めます。
雪に覆われた自然の脅威とインディアンの恐怖を感じながら、復讐の一念のためだけに、
少しずつ前進していくグラスから発せられるのは、寒さと痛みに耐える呻き声だけで、
暖房の効いた劇場で観ることが後ろめたくなるような、過酷な映像が全編貫き通されます。
エンディングで、グラスが鬼のような険相で、観客に向かって眼を飛ばしますが、
その瞳の中には、まだ復讐心の火が燃え滾っていて、文明の名のもとに犯してきた人間に
対する罪が問い質されているようでした。


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