オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう




監督・脚本 J・C・チャンダー

音楽 アレックス・エバート

撮影 フランク・G・デマルコ、ピーター・ズッカリーニ

編集 ピート・ボドロー

出演 ロバート・レッドフォード
2013年 アメリカ


人生の晩年を迎えた老人が、自家用ヨットでインド洋上を航海中に事故に遭い、

自然の猛威に曝されて、生死の境を彷徨う恐怖を描いた本作は、

出演者がロバート・レッドフォードひとりで、台詞の無い独り芝居で

構成されたユニークな設定が受けて、無重力空間に投げ出された

女性宇宙飛行士(正確にはメディカル・エンジニア)の地球帰還への孤独な

戦いを描いた「ゼロ・グラビティ」と共に、昨年、サバイバル映画の傑作として、

批評家から絶賛された作品です。





船腹に開いた穴から浸水した海水の影響で、自由にヨットを動かせなくなった

上に、無線機やパソコンも使用できなくなり、漂流するしかすべのない状況で、

主人公は色んな知恵を働かせて、危機を回避して行くところが見せ場に

なっていますが、その一つ一つの作業がとてもリアルなので、実話だと思って

観ていたのですが、観賞後にネットで映画の情報を調べてみると、

すべて監督の創作だと言うことが分かり、その発想力の豊かさに感心しました。

監督自身がヨットを所有していなければ、ここまで微細に船内の様子を描く事は

不可能と思える説得力のある描写に、終始画面に引き込まれます。

但し、「ゼロ・グラビティ」と同じで、クライマックスだけを描いた映画で、

主人公のバックボーンが全く描かれていないので、死を覚悟した主人公が、

家族か知り合い宛てに書いたと見られる遺書を、瓶に詰めて海に流す場面の

感動が薄く、人間ドラマとしての重厚さに欠けているのが、減点材料でしょうか。

もう一点、折角老人を主人公にしているのですから、老眼鏡を失くして救命キットの

説明書きが読めないとか、船内に流れ込んだ海水をかきだすのに息を切らすとか、

加齢によるハンデをシナリオに盛り込んでいれば、観客の緊張感も増したと

思いますが、こんな気持ちになったのは、今年77歳になっても、「大いなる勇者」の頃と

変わらないレッドフォードのイケメンぶりに、無意識に嫉妬していたからなのかもしれません。





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