レスラー | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


監督 ダーレン・アロノフスキー

出演 ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド

2008年 アメリカ


私が幼少の頃はプロレス全盛期で、脇の下を「ポコンポコン」と
音を鳴らして相手選手を威嚇する豊登のまねや、
ザ・デストロイヤーの足四の字固めを友達同士で掛け合ったりして
よく遊んだものですが、現在ではガチンコの格闘技に客を奪われて
人気は低迷し、さらに打開策として後追いしたために、
本来のショーマンシップ的な要素も失い、純粋なプロレスファンにも
愛想をつかされる悪循環に陥ってしまいました。
本作の主人公は、そんなプロレスの良き時代を築いてきた
中年レスラーですが、プロレスのファイトマネーだけでは
食べていけず、酷使してきた肉体も衰えて無理が利かなくなり、
心の支えとなる家族とも疎遠で、孤独の淵で喘いでいて、
哀感を誘います。
主人公を演じるミッキー・ロークは、そんな時代に見捨てられようと
しているレスラーに自分自身の人生をダブらせて、
残された人生をいかに生きるかではなく、いかに死ぬかを
体現して見せてくれて、同じ心境にいる今の私にとっては、
心にズシリと響くタイムリーな映画でした。
監督のダーレン・アロノフスキーは、過去の作品とは趣が異なり、
奇を衒うことのないストレート勝負の正攻法演出で
新しい一面を見せてくれますが、主人公と娘、
好意を寄せるストリッパーとのエピソードの描き方が
浅かったように感じました。
ハーバード大学卒のエリート監督には、底辺で生きる人間の
悲哀を描くには、まだ若すぎたと言うことでしょうか。

最後に、プロレスラーの三沢光晴さん、大阪プロレスのレフリー
テッド・タナベさんのご冥福をお祈りいたします。


(2009年6月15日)


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