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文学ing

森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

音楽家が死んだって私は悲しくも何ともないわ。

嘘だった。
嘘ではないと思っていたのはほんとう。ワーグナーが死んだとき何人泣いただろう?
尾崎豊が死んだとき?ヒデが死んだとき?あんときくらいニュースになるかしら?米津玄師の死がニュースになるかしら。
嘘です、私は、とても悲しい。中学生のときとてもファンだったバンドボーカルが自殺した。
そのころ、音楽家の自身死はよくあることだった。よくあることだっから、自殺になってしまった。
仕舞わなくても、同じことだよね。
古い部屋を掃除していたら、出てきたのだ。その人の、ことが。
たくさんの切り抜きや、ラジオを録音したテープ。もう色褪せた、ブロマイドみたいな写真。私は、集めていたのね。

私は酒屋に行って麦焼酎を。
こんな時は呑まなきゃね。
私のあの人はもう居ないの。とくに死んでしまったの。そして私は泣きもしないの。
ただ、ただ、泣きたくてたまらない。様々な事が私にそれを許さない。
眼球は固く、涙は冷たい。私は泣き叫ばない。
ああ、私のあの人は死んでしまった。私は、さっきまでそのことを忘れていたのです。