小説『循環』 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

昔は人も鬼もなかった。金に比定されるところの神だけ、いた。物が金だから変化もしないし発展も劣化もない。死別もない。ずーっとそのまま、なにも変わらない時代が、正確にどのくらい続いたかは分からない。

ひとつはっきりしているのは、いつのまにか鉄に比定されるところの死すべき人が居てしまったこと。

最初は神のこども達だった。腐って死んでしまう例が増えた。それをもって、自分たちとは違う者が現れたとしたのが、人の始まりで。

人はそのうち腐って死んでしまう。金であるところの神から生まれたのに、鉄というのが信じられない。何か原因があるはず。

で、探したところ、水に比定されるところのものが見つかった。こいつらが鉄を腐らせて死なすのだろう。神はそれを鬼と為した。

で、鉄から水を遠ざけたら、腐って死んだりしないだろうと。

鬼をできるだけ殺したのでした。

しかし、一向に鉄は生まれてくるし、水を遠ざけてもなおのこと錆びて死んでしまった。最終的にらちがあかなくなって、神は鉄も水ももろともほったらかして捨ててしまった。

かといって、鉄が生まれるのは止められないので、結局金であるところの神はきえた。

残った鉄は、水もろくすっぽ無いところに捨てられたのだから当然金を憎んだ。そして、それを鬼だと考えた。

そして自分たちになくてらなら無いものとして、水を神様と呼んだ。でも神はなにもしてくれなかった。

水を崇めてもおがんでも、こどもは死んだ。生まれてもすぐ死んでしまった。そのうち生まれた時からもう錆びている赤ん坊が出始めた。

だから鉄は、これは水を拝んだのがいけないな、とき付いた。そのころは鬼の数もだいぶ増えていたから、それに鬼は切り替えるのがはやいから、さきんじて鉄をできるだけ殺したのでした。

それで、鉄の死んだ後には、いくらかの樹木が生えていたので、これから自分たちは樹木の神になろうとして、勤めた。

幸い樹木はまともだったので、鬼が増えると自分たちに都合が悪いとすぐに理解した。

樹木は水に鍵を付けてあまり自由にうごき回れないようにして、自分たちを生んだ金を神様にして懐かしんだ。

それでも水もは鍵を破って暴れるし、そのせいで樹木は枯れたり死んだりする。

よりまともな樹木は、これは金みたいなものを神にして拝んだのが良くないのだ、と考えて、水をしばっていたやつらをあらかた殺して、水を拝むためのたいそうな家を作った。金と鉄と木で作ったのでした。

それでもこどもは死ぬし生まれてこなくなるし、で、次は誰のせいにしようか、私は考えているところです。