これからどうするの?
と彼に訊かれたので、私は思い付いたとを言った。
「どう言うこと?」
どうだっていい。
「お兄ちゃんとおねえちゃんがいるからあんたはいらないわ、死んでもいいのよ。
そう言われたわ。」
彼はキッチンでさっき食事に使った食器を洗っている。
水道から細く水が流れている。
私が同じことをやったら、ぶちのめされただろうな、と私は思い返している。
この家に来てから私は服を着ると言うことをしない。誰も私をとがめない。
「要らない子なのに、育ててもらえたんだね。」
「あんたは墓掃除役よ、って言われたから。」
きゅ、と彼は水道を止める。戸棚から布巾を探し出して、すすいだ皿を拭きはじめた。
「わたしはね、家族のお墓を掃除するために、いかされていたの。」
「もっと他にやらせることはあるだろう。」
と彼は背中を見せたまま言う。
「体売らせたら、金になるだろう。」
あんまりなことをいうひとだと思う。
私は首を横に振る。見てないけど。
「あんがい、マージン跳ねられるのよ」
「つまりやったことがあるの。」
「やらされそうになったことは、あるの。」
しかたがないので私は万引が上手くなった。
家は夜眠る場所だった。食事をする所ではなかったのだ。
私は、コンビニのおにいさんと仲良くなって、棄てるおにぎりを分けてもらったりして生きていた。
それ以外では何でも盗んで生きていた。
そして寝るために家に帰った。
生きる、について定義をくれたのは、あの人だったけど。
「君の家族は墓掃除をするのがきらいだったの?」
と彼は訊く。私は、家族のきもちが分からないので少し考える。
「嫌がらせが好きなひとたちだったと想うの。」
「イヤガラセ。」
「おまえには価値がない、とおもわせといて、ほんとは価値があるのよ、とおもわせて、価値のないことをさせる、の。」
「なるほどね。」
彼は食器をすべてきれいにしてこちらを振り向いた。
「イヤなの?」
「何が?」
「これから、墓掃除しに戻るのが。」
と彼は訊く。私はふしぎな心で彼をみる。
「自分の家族を悪くいうつもりはないけど、あなただったら戻りたいとおもうの?」
ふしぎな人だ、と私はその人のことを見ていた、金で買った、私のその人のことを。
「僕なら墓石を叩き割ってやる。」
と、ほがらかに笑って見せた。