“言葉が「無い。」” | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

言語には生命が宿ると昔から言われています。

逆に言語を持っているものは生命も同時に得ていると私は考えます。

言語のロジックを脳に備えていなければどんなに着飾っても生きる甲斐が無いのです。

そして私はこうも考えます。

死にに行く人間の体からは言葉が抜けていくのだ。

今まで仕事や身内の関係で何人ものフィニッシュの現場に立ち会いました。

その人たちはね、
その瞬間に向かっていくとき、
少しずつ少しずつ言葉を失っていくのです。

生命と言うのは、人と交わす言葉の、その言語がかち合った一瞬の閃きの中にこそ存在するのでしょう。

それが、
無くなっていくんです。

おそらく脳の中からその機能が失われて行くのです。

長男を連れて義父を見舞いました。

既に、
言葉の無い状態でした。

交わす言葉を無くしたら、
もう生きていると言えないじゃないか。

と言うわけで、
肉体死よりも先に精神死を迎えたような状態でした。

私はこの先自分が生きて、
何度この状態に立ち会うことだろう。

私にはもうかける言葉が無かったんです。