小説「思い出の鉱脈」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

近くの川原は堆積岩がむき出しになって居て。
週の始めに私はツルハシとハンマーを軽トラックに乗せて、堤防まで出掛けていく。
そして川沿いの岩肌から大きな石をいくつか叩き割ってくるのだ。
それを家の作業場に運んで、細かく掘り崩していく。
小さなアンモナイトなどよく出る。そうでなくても小魚や、貝の化石はゴロゴロ出てくる。鮫の歯の化石は、ストーンマーケットに出店するために取っておく。上物だからだ。

私は、毎日石を掘って、出てくるくず化石に、劣化防止の塗料を吹き付けて、近くの道の駅で土産物として売っている。
あまりいい稼ぎには、ならないけれど。

ところでタイムトラベラーは居るのです。私はよく掘り出すのだ。石の中から、機械の欠片やボルトやパソコン部品のような、ものを。きっと恐竜の時代に時間旅行に行った未来人達の残したものなのだろう。
レトロ趣味の人もいたものか、懐中時計を掘り出したこともある。

「未来からやって来たタイムトラベラーは、どこにいるんだい?」
という有名な問いがあるが、答えは簡単で、もっと過去の時代に居るのだ。
せっかく時間旅行するのだ。未来人だってわざわざよく知っている人間のいる時代なんかに来ない。
素通りするだろう。つまり今の時代というのは、人気のない観光地みたいなものだ。この町みたいなものだ。

そして、もっと人気の時間帯を旅行する。
恐竜とか、もっと不思議な生物の居た時代を観光する。そう言う人たちが残したのだろう。こう言うおもいでの品は。

そして。
そんな彼らの中には、アクシデントで家に帰れなくなった人も大勢居たのではないだろうか。
だって、機械片がこんなに出てくる。
大きな生物に襲われて、機械を壊されてしまうこともあったろう。そして、不遇のうちにその時代で一生を送ったのだろう。

私は今日掘り出した、きれいに平たく潰された頭がい骨にノミを当てながら、そう思った。