かなしくなかった。
でも、今自分をお腹一杯みたしている感情に何か名前を与えなくては。
私は哀しかった。
かなしもう。
間違っている。そんな考え方は間違っている。哀しむだなんて。私が?バカにしているの?
再び動き出した信行の下に体を晒しながら、私は心臓の裏側の秘密の出入り口から、あふれてあふれて仕方ない感情。これは、信行には理解出来ない。だから悟られる心配はない。不思議な安堵感に守られていた。
俺を見とけ、と言ったぶん、今度信行はガムテープで私の口元を塞いだ。
…こう言うことがうれしくて仕方ないのだろう、笑っている。
信行は笑っている。
笑って、そして全力で動き回っていた。
私の哀しみはあふれた。溢れたけど行き場が無かった。一つ、一つだけ、考えたことがあった。
気付きたくなかった。こんなものに気付くのなんていやだった。でも、私は気付いた。
自分がこんな目に遭っている時に、とうとう見付けてしまった。
そうよね。そりゃそうよね。しんでしまうものね。
私は、哀しかった。ソウスケが死んでしまう。耐えられずに死んでしまう。
私が哀しかったのはどこまでもソウスケのためだった。ああ、かわいそうなソウスケはどうなってしまうんだろう。
私が二度と帰らなければ、あるいはソウスケは助かるだろうか。
なにもかも知らずに、生き続けてくれるだろうか。なら私はずっとここにいる。構わない。今まで幸せを感じたこともない。だから、不幸が何かも分からない。だから不幸にはならない。
私は、もうソウスケに会ってはいけないの。
だって私は捕まえたもの。かわいいアリスが出来なかったことを、ドミナトリスクに捕まっていても、成し遂げたもの。
私は見付けた、
ソウスケのモレナ。
そりゃそうよね。逃げ出したくなるものね。仕方ないね。
ソウスケのモレナ。
それは彼の中の押さえようもない、妹(ワタシ)への性慾。