小説「肉体は消える」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

タマシイを計測する方法の研究をしている、のだそうだ、オジは。
「肉体が思考をするか?」
そんな事を言われても分からない。

「肉体が感情を表すか?肉体が人を殺すか?肉体が芸術を行うか?
いいや違うな。あんなものは単なるアミノ酸の固まりだ。
すべては霊の行いなのだ。」

と、言うことを証明するための研究を行っているのだが、それでは生活出来ないので本業は新聞配達だ。

オジは60過ぎで独り身だ、死んだら、体は焼いてあげようと思う。葬式は、お金無いから要らんだろう。

オジに言わせると、肉体はフィルムの上に付いた傷みたいなものだ、そうだ。

現実と現実がかちあったけっか、更に大きな現実の枠組の上に、へっこみなりでっぱりなりが出来る、それが肉体と言う状態なんだそうだ。

肉体にはなんの意味もない。
それは霊が現実的に肥大しただけの状態で、行ないの蓄積に過ぎない、
霊こそが真理の代行だ、霊を計測化することで、宇宙の始まった瞬間に私は肉薄することが出来る。

と言うのがオジの夢らしい。それを叶えるために、一生をうちの裏庭に立てたプレハブの中で過ごして、朝と夕方に新聞配達しに行く以外は何にもしない。

つまり、嫌われものだ、そして、嫌いものだ。
オジはその存在の有用性の無さからあらゆる人間に嫌われているが、その存在が持ち重りしているために、自らのことも嫌っている。

だから霊の計測に拘っている。そして計測した結果、
「霊など存在しない。」
と言う事を証明することを夢見ている。つまり宇宙も世界も肉体も否定したいのだ。

ま、その前に死ぬだろうから、そうしたら焼いてやろう。
本家の墓に、入るかな。