小説「ヨソカラキタヒト」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

変な人が倒れていて、駐在さんに匿われていると言うから思わず見に行ってしまった。

その、変な人を見たかったのは私だけではないらしく、突如として顕れた髪を包んでいないその人を、みんながめずらしがって覗きこんでいる。

「髪の毛包んでないんだって!」
と子供もびっくりしている。
突如として行きだおれていたその人は、中途半端な長さの髪の毛をケープで包みもせずに人に見せるままにしているらしい。

ケープと帽子で自分の髪の毛をきっちりと隠した駐在さんが、
どうしてあなたは髪の毛を包んでいないんですか、と再三訊ねているらしいのだが、その、髪を出したよそのひとは、話は分かるらしいんだけど、何を言っているんだか全く噛み合わないそうなのだ。

私は立川で営業先から会社に戻るつもりだったのに、気が付いたらここにいた。ここは一体どこなんですか?

と訊く、
だから駐在さんが
「ここは日本だよ。」
と答えたら、
だから日本のどこなんですか、なんて聞き返す。
日本と言ったら日本しかない。この人は何を言っているんだろうか、とみんな首をかしげている。

早く会社に戻らなくてはいけない、としきりに話すのだが、会社なんて、いったいいつの話をしているんだろう。

ここは日本だ。
小さな島国だけど、国土の大部分は使い物にならなくて、ここの村だけに人が住んでいる。
昔はたくさん人がいたらしいけど、今はこの地域に三百人ほどで暮らしている。

会社と言うのは日本の国に人が住める土地がたくさんあった頃に、よく立てられたものらしいけど、詳しいことは私も知らない。

とにかくその頭を露にした女の人の話は何から何までわからない。
まるで百年昔の話をしているみたいなんだから。