帰りの電車の中でマコはずっと泣いていた。街へ戻る電車の中には俺たちしか乗っていない。
八月の夕方は何時までたっても昼間で、赤色をした夕陽は沈む気なんてさらさら無いようにおもえる。
何かの嫌がらせか、と俺は忌々しく思っている。
太陽があかるけりゃ気分が良くなるほど俺は能天気じゃないんだ。
でも、確かに雨の日よりは気分がいいな。
衣笠マコは電車に乗ったなり泣き出した。
こいつはあんあん泣いたりしない。涙だけボタボタ膝の上に落としている。俺は隣に座っていて、マコの方は見ないことにしている。
だがこいつがあんまりにもでっかい涙を落としているから、俺には嫌でもマコが泣いていることが分かるのだ。
「おかあさん、私のお父さんより、好きな人が居たんだ。」
と言った。
女にはそういうことが大事らしい。因みにお父さんより好きな人、と言うのが俺の友達なんだ。
友達なんつて言っても45のおっさんなんだけど。でもおれはおっさんの友達だ。それは、変わらない。
そしておっさんは30年前からマコのおかあさんの事が好きだったんだと言った。
マコは現在おかあさんと暮らしていない。マコの父さんと離婚したからな。
だからマコの着ている白いスカートは自分で洗濯してきれいに畳んでしまってるんだ。
俺は、なんで洗ったらこんなにピカピカになるんだ?と、マコのスカートから目を背けるので必死だ。
おっさんとマコのかあさんは、30年一度も会っていない。
だが30年前からお互いがすきだったらしい、俺たちは、14だ、訳がわからねえ、
そんなに長くたった一人だけ好きで居られるもんなんだろうか。
マコにはそう言うことが大事らしい。自分を生んだ女が自分を作った男より好きな人がいる。
そう言うことがとても大事らしい、だから帰りの道のでずっと泣き通しだ。
俺は、頭だいてやるなり手を取ってやるなりするべきなのは知っている。
出来るか、そんなこと。
マコはどぼどぼ泣きどおしだ。
俺は、おっさんとマコのかあさんをどうにかして会わせようと、考えても俺のくそばかな頭はちっともはたらきゃしねえ。