小説「そこは自由の国」 | 文学ing

文学ing

森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

牢屋の中の死刑囚、でなければ死のうと思って飛び降りて、途中の岩に引っ掛かって身動きが取れない。
その向こうには自由の国、私には行けない。

到底受からない大学の入試結果を待っている。もう届く頃なのに何時まで待ってもやって来ない。
こんなとき郵便屋は、ダイレクトメールばかり配送して私を苦しめる。

模試の判定は一回だけがC。それ以外はDかE。
到底受かる筈がない。私は意味不明の英文に適当な答えを書いて帰ってきたのだ。受かる訳がない。

なのに結果を待っているのがこんなにも辛いのか。
私はベッドにうつ伏せて、枕に顔を埋めて足をバタバタさせているんだけど、
その足が鎖で繋がれているようにどうしようもない。私は何処にも行けない。

格子のはまった窓から外を覗くような気持ち、途中の岩の上で何度も朝日を迎える気持ち。

殺される私は、死にたい私は、でも、それでも感じるのだ。

空はなんて広いんだろうと。
格子のはまった窓に月が掛かるときに。岩の上でうずくまって、朝日が昇ってくるのを待つ間に。

なんて、なんて。
空は広いんだろうと。
死んだら私はそこに行ける。でも結果通知はまだ来ない。
私は死ねない、殺されない。

その向こう側は自由の国。私は、鎖に繋がれたまま、まだ生のこちらがわでもがいている。
自由の国には行かれない。