小説「欠落。」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ずっと若い頃、腹に据えかねることがあると、一人でらーめんを食べに行った。
友人に、
「らーめん屋だ!!」
と怒りに任せてメールを打ったりする。大体みんなが、
ああ、ゆみちゃんまたなんか怒ってるのね。と、解ってくれたみたい。

思いっきり辛いらーめん一人で食べたりしていると、辛いから、口が痛くなるから、必死で、何となく、色んな事がどうもよくなって、食べながら、私は兎に角腹を立てているんだけど、
何せ辛いし、お腹は一杯になるしで、それで私は嫌なことを忘れられた。ずっと若い頃の事だ。

この頃はそんなことないな。

一人で食事に行こうと思う以前に、腹が立つことが無くなった。
私は、怒りが枯渇してしまった。

気付いたときは、取り返しが着かないんだと思った。ぞっとした。
私は、もう、なんにも感じなくなっている。

怒ったって何にもならないと思ったときの私の心。
空しかった。

背中に穴が開いて内臓が三つほどぼろぼろこぼれ落ちて行ったみたいな。
私は内臓を失ったまま歩いていく、平然と。
私から抜け落ちた内臓(腎臓とかかな?)は誰からも省みられず、ああ、踏んづけて行く人も行く。

その時の私の心。私は年を取ってむしろ多くを失った。お金も物も失った。家も人も失った。

そして何より耀耀として動く心を失った。だから、怒ったって何にもならないと今なら思うのだ。

体の中に穴が残っているのに平然と私は生きていく。
私は怖いことが一つあって、この先何もかも失っても(まだ失うものは取り合えずある。)
まだ私はものともせずに生きているのだろうかと。
きっとそうに違いないと思う自分がいて、嫌になる。