昔は、男女の双子が生まれると、心中者の生まれ変わりだと言われた。
だから大人になったら無理やり結婚させていた。そうしないと更に祟ると考えられていたらしい。
無理に結婚させられた兄と妹、あるいは姉と弟が、その後どんな人生を送ったのか?興味はあるのだけどソウスケはその続きまでは話してくれない。
そういえば昔の日本では実のきょうだい間での結婚も頻繁に行われていたそうなんだけど、一体いつごろから無くなった習慣なんだろう。
「古代は必然的に人口が少ないからな。行きがかり上兄妹で結婚しないといけない状況もあったから固定化した習慣だろう。
一般的に子どもは母親に属する物だから、母親が違えばきょうだいだと考えられていなかった。だから腹違いの兄妹同士の結婚は認められていたんだが、
しかし実の兄妹で結婚したという記録も残っている。だから、古事記にある軽の兄妹の悲劇は、現実には起きなかったという考え方が今では主流だ。」
ソウスケは古典の研究をしている。
でも、実の兄妹の結婚がいつごろから禁止されたかについては、どうしても教えてくれない。本人も分かっていないのか、情報があいまいなのか。
「出典の明らかでない文言は情報に入らない。お前も良く考えて学校のレポートを作りなさい。」
などと言う。
単に言いたくないだけじゃないかと私は考えている。
だってその制度が今でも生きていたら。
朝起きたら、ソウスケは平然とご飯を食べていた。昨日の派手な喧嘩のダメージは一切無いようだった。
ソウスケは感情に影響を受けない。だから、私が信行と付き合いだしてからどんな感情の動きがあったのか私には分かっているけど、
でも表情や言動に露わにすることは無いのだった。だから私は時どき信行の部屋に行って、快適な夜を過ごしてそのまま学校に行く。ソウスケは、揺るぎ無い。
ソウスケの母親は三日と置かず電話をかけてくる。着信拒否にしたら研究室に押しかけてくるので、ソウスケはやむを得ず、自分の母親の電話に出てやっているのだった。
そしてそのことからくるダメージを、ソウスケは決して表情に出さない。
私が台所に入っていくと、入れ替わりに梓さんは2階に上がって行った。
「悪いことしちゃったね。」
と私はソウスケに言った。
「梓さん、ご飯食べられた?」
と尋ねた。ソウスケはスクランブルエッグとピーナツバターを塗ったトーストと茹でたブロッコリと牛乳を朝ごはんにしている。
「梓は時間に余裕のある人間だ。自分の飯くらい何とでもするだろう。」
梓さんは、絶対に私の分の食事を作らない。無言の抵抗みたいなものなのだ。私としては助かっている。
料理の練習をする時間をたっぷりもらえるから。ソウスケは幼い私に言った。
「教養というのは金銭管理と料理のためにあるものだ。この二つが出来ない人間は、他に何が出来ても、だいたい駄目だ。」
だから私は料理と金銭管理だけはしっかり出来るようになりたくて、経済学部を受験した。成績は、悪いけど。
炊飯器を開けたら冷ご飯が残っていたので、卵かけごはんにしてインスタントのお味噌汁を作る。
「ちゃんと野菜を取るようにしないとダメだぞ。自分の体をなんだと思っているんだ。」
ソウスケの向かいに座ったらそう言われた。
「大丈夫、このお味噌汁フリーズドライだから、キャベツとシメジとわかめが入ってる。」
「わかめと豆腐くらいだったら買い置きがあるんだから、ちゃんと自分で作りなさい。」
ソウスケは時々、うるさい。
「ふん、小姑。」
と、言ってやった。
ソウスケは牛乳を飲みながら私の事をじっと見ていたが、
「俺が何のために口うるさいのか、分からない訳じゃないだろう。」
と言う。
「ええ、そうね。」
私は卵かけごはんを木のスプーンで混ぜた。そして急いで食べ始める。そうじゃないと、
お前のために決まっているだろう、
というきめ台詞を言われる。聞き飽きたから、じゃなくて、何度聴いても私は哀しくなるのだ。
今日は快晴で、講義は一限目から始まる。だから私も、今日は早起き。