小説「不思議な話。」

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蟷螂は子孫繁栄の縁起物である。卵を沢山生むからだそうだ。

私の家の欄間の所に、三日ほど前から蟷螂がいすわって動く気配もなく其処にいた。
本当に、じっと座って其処にいた。

害に成る虫でもないし、欄間は高いから追い払うにも面倒だし、ああ、居るな。
と思いながら三日が過ぎた。

そして蟷螂がいなくなった日、百年前に死んだと言う高祖父の法事があったのだった。

百年も前に死んだ人の事なんて、誰も知るはずが無いのだけどお寺さんと言うのは律儀でちゃんとそういう、節目節目の法用の事を知らせてくるのだ。

まああちらも念仏で食っていってるんだから営業も必要だろうけど。

ともかくもその高祖父の法事を執り行ったのだった。

不思議な事は暫くたってから起きた。
「北海道の服部です。」
と名乗る年配の夫婦が突然訪ねてきたのだ。
ご連絡もせずに申し訳ありません、こちらの住所が正しいか確認出来なかったので。と言う。話を聞いた。

高祖父は入婿で、元の姓を服部と言った。高祖父の兄弟たちは開拓時代に北海道に移住し、
高祖父だけが先祖のお墓を守るために地元に居残ったのだそうだ。
色々と確認しあってみると、その老夫婦は私の祖父の又従兄弟にあたるようだ。

ほぼ百年、なんの関わりも無かった遠い親戚がいったい何故?

「蔵の中に薄日を浴びて、蟷螂が居座っている夢を三日続けて見たのです。
四日目に蔵を開いて調べてみたら、こちらのおじいさんの手紙が出てきました。

古い手紙だったので読める人に頼んで判読していただいたら、弟に中る私の祖父に宛てた手紙で。
お前とはもう縁が切れたが、私が死んだ後百年したら、どうか思い出して弔ってほしい。
其処に書かれてあった住所を頼りに、失礼でも伺った訳なのです。」

不思議な話もあったものだ。