横を通った女子高生三人が悲鳴を上げた。
何も起こっていない。彼女らの夏やすみはどうやらまだ続いているようである、制服の夜8時は随分真っ暗に成ったが、
そんな中を悲鳴をあげながら、其処ここへ散らばって女子高生が、行く。
いったいお前たちはこの30年何をしてきたというのだ?
私はお前を知っているよ。お前は同じクラスのフィギュアスケーター養成スクールに通っていた大谷だ。県内で一人だけダブルが跳べた。
私はお前も知っている。お前は英語の成績が極端によくて、そのせいで却って教師から嫌われていた斉木だ。実力テストの順位は常に5番以内だった。
私はお前のことも知っているよ。お前は隣のクラスの一番のお調子者だった青木だ。授業中に先生に私語をしてもお前だけは叱られなかったな。
私はお前のこともしっている。お前は手先が器用で学園祭のファッションショーの衣装を独りで縫った橋場だ。あんなにちゃんとした衣装を準備したのはこのクラスだけだった。
お前のことも私は知っている。お前は吹奏楽部で、ピアノを担当していた仲村だ。ピアノの才能はあったが、有るというだけの才能だった。
私は知っている。
誰も彼もの事を考えているとは知っている。
すれ違う高校生達の誰もの事を知っている。お前たちはいったい何をしていたんだ!
私はカバンを道に叩きつけて怒鳴りたくなる。いったいお前たちは、お前たちの親は、お前たちの国は、
何をしていたんだ、お前たちは30年前から何も変わっていない。
髪型も、服装も。
何も起こっていない、変わらないままに肉体だけが新しいものに取り替えられたお前達が、終わってしまった夏休みの底を歩く。
かつては私はお前たちだった。
しかしお前たちは私ではない。
私はいったい何をしていたんだろう、この変化しない時間に、空間に、自分に、何を得て何を求めて。
私はいった何をしていたんだろう。
なんにも起きていやしない。