朝、車で走ってきて砂浜を歩いていた、今日は波が高い。こんな日は泳ぎに来てはいけない。
波打ち際に、くさった菊の茎がまとまって打ち上げられていた。花弁は海の中で揉まれて散り散りに成ってしまったんだろう。白い波頭が何にもかも台無しにしてしまった。
先日海難事故があって、亡くなった方があったから、追悼船が出たのだと夕方のニュースで告げていた。
この半ば腐りかけの菊も、その時海に放たれたものだろう、確認する方法はない、でも推測は全く見当外れでもない。
これに、飲まれた人があったのだ。
今朝は波が高い。白い巓が次々に盛り上がっては何もかも台無しにしてしまう。
なんて恐ろしい事だろうかと私は震えた、海風が寒いばかりではない。
こんな固くて尖った海の中に飲まれていった人があるのだ。その人は一体どんな事情が、
どんな謂われがあってこんな無情の波の下に入らなくてはならなかったのだろう。恐ろしい話だ。
菊の茎は其処ここにけっこうたくさん流れ着いていた。
花屋さんが留めたであろう輪ゴムに括られたままで、ここまで流れ着いていた。どんな波間を虐げられて、思いもよらないこの浜辺までやって来たんだろうか、冷たい、蒙い、海を潜って。
この怒涛にくるみこまれたらどんな思いをしなくては成らないだろう。私は恐ろしい空想をしながら、菊だけじゃない、いろんなゴミが沸いている砂浜を歩いていた。
自分がどうしてこの朝にこの浜辺を選んで歩いているのか、
分かりもしないでさ迷っていた。