足元を、下ろし金に、当てる様に、熊笹は繁っている。私はそれを掻き分けて奥へ奥へと、進んでいる。
ああ、なんだってこんなに邪魔っ気な。私はやっかいな笹塚を腕で避けてよけてしながら、山の、奥の奥の方を目指している。
それにしで邪魔っ気だ。なんだってこんなに籔が盛っているのだろう。
まあ、仕方ない。
私はそれが目的なんだから。
ここは必要の無い場所だからだ、私はそれがちゃんと分かっている、分かっているから此処に来たのだ、私は自分を磨り減らす、草が私を磨り減らすのに身を任せるために、この塵みたいな山に分け入って行くのだ。
私は、自分を無かったことにする。そう決めたからこの山の中に入っていく。
何も無い山なのだ。熊笹が私の行く手を阻んでいるだけだ、鳥もいない、名前もない、丁度よい。
私は自分の濁りや淀みを捨て去るために、繁みで自分を漱いでいる。だからこういう名前の無いどうでも良い山を選ん分け入っている。
私は自分がよく汚れているのが分かっているから。
臭気が凝っているようなこんな山の中が丁度よい。
私は熊笹を、かきわけ掻き分けて山の奥の奥の方へ目指していく。
多分、どんなに目指していってもそこには何もない。ただ同じ熊笹が繁っているだけだ。
私は自分の澱みを置いてこれる場所を探して深山をかけずっている。
自分の体が擂り粉木に当てるみたいに、無くなって仕舞うのを待って。