長編お話「雨の国、王妃の不倫」の24 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

「先生友達を探してください。」
「嫌です。」
とすげなく言われた。

「人を警察犬か何かみたいにかんがえないでね。
私の仕事はインフラ整備。人の道行きの整理整頓をすることなのよ。言ったでしょう。

居なくなった人間を探すんなら他当たってちょうだい。そして今週のスケジューリング管理、間違えないでちょうだいね。この間みたいに。」

直井くんが居なくなったパニックは続いていた。私はあっちでもこっちでも下らないミスを連発していた。
「でも先生、その友達は私にとって必要な友達なんです。」
私は食い下がるのだ。私が水かえを怠っているから先生の机の上の切り花は萎れて嫌な匂いがするようになっているけど、
先生はそれについて特に注意を払わない。
花の水かえをしないことは道行きのインフラ整備と比べて非常に些細な事なのかもしれない。

「私の運命の敷石のひとつなんです。
今それがかけ落ちてしまいそうなんですよ。
私の道行きが変わってしまうじゃないですか。なんとか直したくださいよ。」
と私は言った。

「欠けた穴は他の敷石で埋めれるようになっているわ。あなたの道がそんなように出来ているのよ。」
良かったじゃない、先生はタバコの烟みたいな雨が降っている窓のこちら側で私を振り替えっていうのだ。

「あなたの道はそういうふうになっているの。
ここで大きく並びが変わってしまっても、特に問題ないように、同じ所に着くように出来ているの。
だから私が何か手だしをすると言うのは、間違っているというより、
無意味な事よ。」
それよりコーヒー買ってきてくれない? カフェインレスのやつ。と先生は言う。

「加えて言うけどね。」
私は外出するためにカバンの中身を探っていたのだが、
「なんですか?」
「あなたの道行きが絶対に変化しない理由ははっきりしてるの。」

私は背筋がざわざわ波立つのを感じた。錆びたチェーンが服の中をたくさん通りすぎていくみたい。

「あなた過去を棄てる勇気なんてないじゃない。
そんな人間がどうやって運命を変えたり幸せになれるって言うのよ。」
鎖で背中を殴られる衝撃。

「…コーヒー買いに出てきます。」
辛うじて口がそう動いた。