「先生、ともだちを助けてください。」
「無理です。嫌です。できるけど、したくないです。」
先生はタブレットの束をぱらぱらと捲りながら言う。
「あのねえ。」
仕事は取りあえず一段落が就いていた。
「人の道すじというのは、石畳の道のようなものなのよ。いろんな形をしたいろんな要素を敷き詰めて、
その人の真っ直ぐなみちができている、
あなたの言うような、そのお友だちを助けるとなると、どこかの敷石を取り除かなくてはならなくなってしまうのね。
でも果たしてその石をどかしてしまうことが正しい事なのかは私には判断が付かない。
いしを一つどかしたら、また別の石を嵌めなくてはならなくて、その、新しい石のために私は他のきちんとした石までどかす必要が出来てしまう。それではみちがどんどん歪になってしまうでしょう。
真っ直ぐなだけがいい人生とは言わないわ。ただ歪なものが正しいのだとも、あなた、言い切れないでしょう。
そのお友だちのためにね。私はいくらでも筋道を付けてあげられますよ。
でもその人がそれで幸せになるとは、私は言わないわ、絶対に言わない。それよりも。」
先生がタブレットを捲る。
「あなた自身のこの空欄にはどうしたらいいのかしら。」
と言ってカードを一枚私に見せた。
王妃、という意味のカードだった。女王、ではなくて、王妃。
「あなたの空欄にはこのタブレットがぴったり填まるの。でもあなたの 現在 にくるカードがそれを妨げている。
言えた義理ではないですけどね。
あなたは頑なよ。自分でその敷石を抱えたまま、離そうともしないんですもの。」
私はまた雨の中に出ていってしまった直井くんに付いて助けを求めたのだ。
でも先生は、私も直井くんも助けない、と、言った。