小説「踏切りじいさん、捕まる。」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

切りじいさんが遂に警察にパクられたという噂で朝から職場が持ち切りだった。

「だって実際迷惑だったものお。良かったわよ。」
ほんとほんと、と隣のデスクの人と話しながら、
いや警察が動くのが遅すぎたくらいだ。と私は朝の仕事を始めるのだ。

踏切りじいさんと言うのは。

市内のとある線路の踏切りに、日がな一日立っていて一旦停止をしない車が通る度にこれを強引に止めては
「とまらんかいっ」
と言って説教をするのだ。

で、ある以上その間踏切りの後ろに渋滞が出来てしまい、近所の人が迷惑をして何度もじいさんに
「もう、いい加減にしてくださいよ。」
と言うのだが、

「踏切りの前はとまらないけんっ」
と言って、埒が明かない。何回言っても踏切りの前で車を止めるのだ。
事情を知っている人は、だから必ず踏切りの前で一旦停止するのだが、
(なんせじいさんが腕組して待ってるんだから)

時々無茶な若者が通ろうとすると断固としてその信念をはっきする。だから若いひととも揉める。
時には車から降りて取っくみあいになったりする。だから渋滞が起きる。みんな迷惑していた。

踏切りじいさんは市の迷惑防止条例に引っ掛かって警察に逮捕された。
朝地元紙に割合大きな記事が出ていた。

「わしはなんぼお悪いこたしとらんっ」

と主張しているらしい。そりゃ悪いことはしていないでしょうけれど。

何て言うのかな、じいさん、善意のセンスが飛んじゃってるのだ、何が良いことなのか、何かずれちゃっているのだ、なんでそんなことに成ったんだろう。

じいさんは何故“踏切り”なんてアダ名が着くほど一旦停止にこだわったのだろう。
踏切り前で一旦停止しないことが何故そんなにワルいことだと思ったんだろうか。

何だか、飛んじゃってるんだよね、センスが。

警察も捕まえたじいさんの扱いに困っているらしい。本人が悪いことした意識が無いものね。

威力業務妨害くらいで丸く納めるつもりかな。