「ヒオリさん!」
三郎彦の庇護の外は、夢の日なただった。ああ二人はこんな風に現実を夢の中に隠していたのね、と思ったのだった。青くない。青くて暗い夜でなく、そこは明るい日なただった。
おとうさんは全身音が聞こえるくらい眩しく光っていた。
きらきら、きらきら、っと鳴って聞こえるよう。おとうさんの全身から眩しい光が夢の中を照らしていた。あたり一面真っ白に明るくて、
命の野原に来たみたいだった
きらきらきらきら光っていた。こんなきれいなものの中から自分が生まれたんだと思ったら嬉しくなった。
白と言うより金色。雑じり気が無くて他の色がない。何よりも真っ白。潔白を煮詰めたような白。
それが夢の日なたの中きらきらとかがやいていた。
私は水晶の群生の中を歩いた。ぽこ、ぽこ、と足元にツボミみたいなかわいい鉱石が生えてくる。結晶の枝が、サアア、と鳴ったら風にそよいでいるみたいだった。
私は両手をしっかりと握りしめる。すべてが終わってしまう前にきっとちゃんと見ておこうと思ったのだった。私の本当の姿を。
これこそが私のアイデンティティ、この姿が私のありのまま、生まれてくる前の姿。だから私はきっといつまでも忘れないだろう。この姿をいつまでも。だって私の中にいつまでも満ちて無くならないから。
だからさようなら
私は右手を強く握りしめた。さっき書いた私の真名。
さようなら、私を作ってくれたひと。とてもきれいな樹木の神さま。
私は握りしめた右手をすっと前に突きだした。
水晶の樹が鳴るのを止めた。私は何か言うべきかな、と思った。でも思い返した。大丈夫。
「わかるでしょう。」
あなたなら。
私は右手をさらにグン、と前に突き出す。水晶の樹の中に光が、光があふれんばかりになって、その姿をさいごに
さよなら
と心の中で呟いたら、光はすっと消えて青い夢が戻ってきて、
それから、
おとうさんは粉々に砕けてしまった。
すかさず間崎さんが怒鳴る、
「成り為りて成りならぬところ一つとしてなし!
もういい喰え、アレハバキ!!」
緑色の大蛇も姿が曇ってぼっと大きな火の玉になった。緑の火球が燃え上がって燃え広がる。
私は後ろを振り返った。
間崎さんのおでこがネジ状に盛り上がり、螺旋の角が生えている。
砕け散ったおとうさんは緑の炎に一とかけ残らず吸い込まれ、おとうさんを飲み込んだ炎は急に竜巻みたいに回り出すと、
傷から手を離して立っている間崎さんの角にぐるぐる回りながら吸い込まれていった、
一瞬。
一瞬で、おとうさんは消えた。
「間崎さん。」
「ヒオリさん。」
ヒュンッと音をたてて間崎さんのおでこの角が引っ込む。
「わたしのほうが強かったから勝った。そういうことでしょ。」
「そう言うことだったのかよ。」
間崎さんが森の中にしりもちをついた。