長編お話「鬼子のヒオリ」の51 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

羽羽木が間崎さんの手から離れて、消えた。
様に見えた。
正確には焼け落ちた様に見えたのだ。いや違う。雷光が一瞬閃いて直ぐに消えるみたいなのだった。

白木の杖は間崎さんの手から離れて一人で立つと、緑色の閃光になって消し飛んだ。
と、直ぐに音の無い雷鳴が頭の上に落ちてくる。

スアーンッッッ

と耳鳴りに鼓膜をかきむしられた
そしてドングリくらいの大きさと重さの  何か   が上から山ほど降ってきた。

バラバラバラバラバラバラバラ
とそこいらに何もないものが散らばる気配。これがこの程度で済んだのは間崎さんのお陰か、三郎彦の力か、どっち?

羽羽木が燃え上がった時の光は辺りの青く暗い空気を一瞬で吹き飛ばした。
金色掛かった緑色の閃光で、その一瞬、

それだけしか無かった。その光しか存在しなかった、そこには。
風景を消し去る大爆発だったのだった。

ドングリが降ってくる気配に両手こぶしで頭を抱えてしゃがんでいたら、やがて下を向いた視線の中に、
不自然な長さと大きさのものが入り込んできた。

それはゆるゆると空中を漂い、泰然と動く鱗で覆われた、何か。三郎彦の気配を強く禁じた私は、ドングリの感触を頭を振って取り払い、急いで立ち上がった。私の前に間崎さんが立ちはだかっている。

そして間崎さんの前にゆうるりと長い体をくねらせて、大蛇が立っていた。

燃える火がタテガミみたいに背中を走って緑の鱗に覆われた巨大な蛇だった。
いや、体の長さから言うと蛇なんだけど、首と尻尾の中ほどに、爪の生えたら脚が四本着いていた。

「竜?」
私は顔を上げて言った。独り言のつもりだった。
「正確にはミズチ。羽羽木の本性。
これが俺のアイデンティティ、神通の真性、アレハバキ。」
そう間崎さんは言った。そして

「働け、アレハバキ、」
と間崎さんが言うなり

オオオオオオオオオオオ

と地鳴りのような叫び声のようなものが響いて、
地面をつんざいて無数の結晶がものすごい勢いで生え出して来る。

脚のある大蛇はつん、と飛び上がると結晶の渦中に舞い降りて、長い首をもたげると、次にはしならせて結晶の群生を叩き壊した、
コャァアン

と澄んだ音を立てて水晶は破片になる、
オオオオオオオオオオオ、
とまた地鳴りが響いた、
でも音はしなかった。

俺が居るから、

三郎彦が耳元でそう言った。