長編お話「その顔に、根の跡」44 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

「俺も坂岡と同意見なんだよね。」
と小田切が言って女に横取りされたビールのジョッキを取り返す。

「なんか、酷いことをしたって気になったよ、確かに俺も。ひどいって、無理矢理やった訳じゃないんだけどさ、
いやむしろこっちは金払ってんだからいい思いさせてもらわないと割りにあわねっつうのな。
でも俺も坂岡の気持ち解る。俺もなんだか酷いことしてる気になったもん。

何でなんだろうな。

正直言って俺はその事が何か知りたいからきょうあんたに会いに来たんだよね。
あんた何者? そんないいボディなのに何でやってるうちに酷い気分になんの? なんで俺のほうが何か搾り取ってる気になんの?
搾り取られてるの俺の方なんですけどね。

あんたほんとに何者? もうな。みんなどうでも良くなってるよな。同級生かどうかなんてな。ただ好奇心だけで集まってるよな。

ああそうか。好奇心か、そうだわな。
なああんたむかしっから分かってたんじゃねえの。
その、生きてくことがツマンネエと思ってたのはそういう事じゃねえの。


誰からも何もされないって質なんじゃねえの。
むしろ相手になにかしちゃうだけなんじゃねえの。だから俺ら搾り取ってる気分になるんだよな。
なんだか訳わかんねえ事を喋っているな。俺は。酔っぱらってるな、これは。あーあ、変な飲み会だよ全く。
解る、俺は解るよ。いいことがなんにも無かったらそりゃ死んでもいいとおもっちまうよな。それは当たり前だよ。

だけどさ。あんななんかカッコいいんだよね。結局筋が一本通ってるからかな。
説得力があるんだよ。

ああ、俺が金で買ったからあんたは死んだりするんだろうな。て。妙に分かりやすい。死ぬために体はってんだから。カッコいいんだよあんた。

俺もなあ。出来たかなあ。そんなカッコいい生き方。出来ねえだろうなあ。俺には無理だなあ。

だから、あんた無理しなくて良いよ。思う様働いて思い通りのことすればいいとおれは思うけどな。宗田さんも言ってだけどなかなか出来ねえもんなあ、
思うがままの生き方なんた。いや、経緯はどうあれ兎に角昔から構想してたことをやろうとしてる訳だろう。

カッコいいと思うけどなあ。異論ないよ。俺は無い。」