「それで、三郎彦くん。狗賓としてのあなた様に尋ねたいのだが、私はいつクグノチの御玉を頂戴しに行けるだろうか。」
間崎さんが今までに無いようなあらたまった声で言った。
言葉遣いだけじゃないのだ。声が。間崎さんがとげとげしていた。三郎彦に対して。あんなにけんかばっかりしてる二人だったのに。
私は護身の方法を教えてくれた時の間崎さんを思い出す。
俺も骨の一本じゃ済まないかもしれない。
只でさえ早く死ぬ。
間崎さんは命がけなのだ。命がけで私のおとうさんをたべて、他にも食べて、それから、それから。
この大地が死んで生き返るのを待つのだと言う。間崎さんは命がけなのだ。私は間崎さんの事も遠くに感じ始めてしまった。
皆が私から遠くなっていってしまう。遠くに行ってしまう。
生まれてから感じたことも無い、こんな気持ち。寂しいかどうかさえ分からない、でも、私は一人だった。
ちがう。私はいつも一人だ。もうそれが、目を背けられないくらい私のすぐ近くまで来ているのだ。
私は目を背けない。
だから私は、一人だ。私は自分ひとりっきりをみつめていなくてはならない。
「鷲ヶ峯の大旦那のお墨付きを俺がもらってからだ。」
三郎彦は片膝を立ててそこに身体を預けながら、態度よりは真面目に間崎さんを見た。
「そうすれば今度こそ俺が鏑木の格を正式に継げるからな、
そうしないと流石にクグノチが荒らす山を押さえきれない。」
「やはりクグノチは抵抗するかな。」
「みすみす自分が殺されるのを受け入れられる奴なんていない。
どんなに苦しんで生きていても。いざとなれば。」
俺だって暴れるさ、自分の事ならな。
と三郎彦は言った。