一日に三十分でいいから人の顔を見に出なさい。と医者に言われている。私は深夜コンビニに向かう。
私は対人恐怖症なので日の高い内は家から出られないのだ。
大体夜11時くらいになってから、自転車に乗って少し離れたコンビニまで出掛ける。
コーヒーなど買う。お腹が空いていたらスナック菓子を買うこともある。
私は人の顔を見るのが苦手だ。だからこそ少しずつ練習をしていきましょうとカウンセラーに言われている。
でも私は自転車を止めるといつも、コンビニの入り口や中に丸い電球みたいな白いのを載せたひとのからだがゆらゆらしてるように見えてしまう。
いかんいかん、と思っていると、やがてそれが顔なんだと言うことに気付く。
短い髪が生えていて鼻が付いていてニキビのツブレタ痕があって眉間にしわが刻まれていて薄い髭が生えていて変な形に歪んだ口がついている。
そう言うものなんだと気付く。ちょっと遅くなるけど。
私はパック入りの豆乳を持ってレジに並んだ。コンパ帰りと見られる大学生の群でレジはなかなか進まない。
私の前には小学四年生くらいの背丈をした女性が化粧品のチューブを持って並んでいた。
三十代後半位だろうか。非常に小柄な女性だ。
この身長に収まってからどんな人生があったんだろう。洗濯の痕の激しい黒いシャツを着て肩にカバンを掛けていて、頬の化粧が乾いて今にもぽろぽろ剥がれそうになっている。
私はこの人が職場でわざと大きな書類の束を運ばされているところを想像した。
抱えとるんだかかかえられとるんだかわからんなあ
なんて意地悪を言われる。
でも言っている方に意地悪のつもりはない。そう言うものを意地悪というのだ。彼女は苦笑しつつ、重たい書類を運んでいく。
だからこそ私は人の顔を見るのが苦手だ。
自分の知らないところで自分とは比べ物に成らないほど必死な人がいると、佳く分かるから苦手だ。